吉沢亮の起用は、撮影監督の進言
Q:撮影監督の今井哲郎さんと照明の酒井隆英さんの起用は、山田監督のリクエストと伺いました。
山田:そうです。お2人とも前々から一緒に仕事させていただいて、信頼もありましたし。それこそ、吉沢くんを推してくれたのは今井さんですしね。
Q:そうですよね。個人的に撮影監督と照明さんが監督のご要望、と聞いたときにすごくしっくり来ました。『AWAKE』を拝見したときに、カメラの動きと、照明の青黒いモードが、スタイリッシュさをもたらすとともに、作品を“今の物語”にしたような気がしていて。
山田:将棋って、一般的に「20代が最盛期」というんですよ。30代・40代ですごく強い人も「自分は20代後半くらいが一番強かった」と言いますし、スポーツ的な要素がありますから。
それもあって、若手の役者さんを起用したかった。そうしたら、結果としてすごく青春映画になったんですよね。そういう意味では、画面の青い感じが作品のテイストとも合っているように思います。
Q:若さで言うと、スタッフの皆さんも70年代後半から80年代生まれの方が多いですよね。
山田:そうそう。若めだったとは思います。まぁ、大ベテランのスタッフさんがこんなぽっと出の新人の作品に来てはくれないかとは思いますが(苦笑)、僕よりも年下の方が多くてすごくやりやすかったですね。
美術なども、多く語らずともお互いに同じビジョンがある感覚ではありましたね。
©2019『AWAKE』フィルムパートナーズ
Q:美打ち(美術の打ち合わせ)は、どのような形で進められたのでしょう。
山田:ポスターにもある部室に関して言うと、「こういう配置がいい」とは伝えました。
「ロッカーをカウンター代わりにして、入ってきた英一と磯野が会話をできるようにしたい」とか、「パソコンをここに置いて、ここを行き来できるようにしたい。かつ、丸椅子に座った磯野が振り返って会話できるようにしたい」とか、そういった動きを含めた空間のイメージをすり合わせていきましたね。
Q:なるほど!作品を拝見したときに、磯野役の落合モトキさんの動きがすごくスムーズで、いわゆる天才タイプの動作が印象的だったのですが、そういう理由があったのですね。
山田:とにかく落合くんには動きを止めてほしくなかったので、触ったり取ったりできるものを動線上に置いて、リハーサルして工夫は凝らしていますね。