油断するとカッコよくなる吉沢亮
Q:今までの将棋映画だと「手元」や「表情」がメインになるものが多かったイメージですが、今回は吉沢さんと若葉さんの身体性、動きの質の違いも映し出されていて、とても面白かったです。身体全体で、人物をとらえることができました。
山田:吉沢くんは本来、身体のキレがものすごくいいアクション向きの俳優さんだと思います。でも今回は、ちょっとの動きだけで役の心情を表現してくれましたね。
あと、将棋の対局が「顔勝負」になってしまうのがすごく嫌で、最初のほうの対局ではあえてそれをやっているのですが、最後の対局においては避けて、途中から英一を映さないように設計しています。
吉沢くんも若葉くんもすごくうまい役者だから、顔が映っていないときにじゃあ何をするかを考えて、実践してくれる。背中だけしか映っていないときには、その状態で何ができるか工夫してくれるので、助かりましたね。
Q:吉沢さんの起用のお話についてだと、『リバーズ・エッジ』(18)が決め手になりつつ、今井さんと吉沢さんがご一緒された『トモダチゲーム』(17)やほかの出演作をしっかり観て、「吉沢亮研究期間」を設けたそうですね。
山田:初監督ということもあるし、気合を入れて拝見しました。いやぁ、でも吉沢くんは飛ぶ鳥を落とす勢いですから、数年後だったら全作品観られるかはわからない(笑)。
Q:大河ドラマ(『青天を衝け』)も始まりますし……。
山田:そうそう(笑)。
©2019『AWAKE』フィルムパートナーズ
Q:個人的にも、吉沢さんの作品はそれなりに多く拝見してきましたが、本作は「観たかった吉沢亮」が詰まっていて、監督の研究のなせる業なのだと感動しました。
山田:本当ですか。嬉しい。
Q:もともと作品選びが非常に独特な方ですが、やはり彼の場合はダークさを持った、ある種ちょっと歪んだ役をやるととてもハマる気がしていて、その現時点での集大成を観た気持ちです。
山田:うんうん。
吉沢くんはイケメンだから、油断するとキラッとしちゃうんですよね(笑)。ご自身もそれはわかっていて、撮影中にはそうならないように避けている気がしましたね。
カットがかかったら満面の笑みになってイケメンオーラがあふれちゃって、「それじゃないよ!」って言ってました(笑)。
Q:(笑)。今のお話をお聞きすると、すごく楽しい、風通しの良い現場だったかと思いますが、いかがでしたか?
山田:もちろん撮る量が多かったので時間には追われていましたが、各スタッフやキャストが「楽しかった」と言ってくれるので、監督としてはすごく良かったです。
Q:その雰囲気の良さが、先ほどお話されていた「青春映画」につながっていったのかもしれませんね。
山田:そうですね。最初から青春映画を狙っていたわけではなく、仕上がっていくにつれて、どんどんその色が濃くなっていったところがありますね。僕の思っていた以上のところに行けた気はします。
Q:作品を拝見してすごく心を打たれたのは、青春に年齢制限はないということです。もちろん、奨励会からプロに行くまでは年齢や才能の制限はあるけれど、プロになれなくても記者になったり、英一のように将棋のプログラムを作ったり、様々な形で“好き”と向き合う青春の形を観させていただきました。
山田:本当に、将棋を好きになって良かったと思います。映画のことより将棋のことばかり考えていた2年間が、報われた気持ちです(笑)。
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監督・脚本:山田篤宏
1980年、東京都出身。 ニューヨーク大学で映画を学び、これまで乃木坂46のミュージックビデオや短編映画で実績を積む。第1回木下グループ新人監督賞において、応募総数241作品の中からグランプリに選ばれた本作で商業デビュー。
取材・文: SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema」
『AWAKE』
2020年12月25日(金)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
配給:キノフィルムズ
©2019『AWAKE』フィルムパートナーズ
出演:吉沢亮 若葉竜也/落合モトキ 寛一郎