『ヤクザと家族 The Family』に詰め込んだ信念と美意識。そして、A24挑戦の夢――藤井道人監督が語る、過去・現在・未来【Director's Interview Vol.104】
「3世代の物語」が生まれた背景とは?
Q:観た方が年齢関係なく「自分たちの話」と感じられるという意味でも、『ヤクザと家族 The Family』の「3世代の物語」という構成は、発明だと思います。どうやってこの構成にたどり着いたのでしょう?
藤井:ものすごく紆余曲折があって(苦笑)、僕が『宇宙でいちばんあかるい屋根』を撮り終わった翌日に、河村さんからいきなりバトンを渡されたんです。「よし、一回ゼロからやるぞ。任せる」って(笑)。
それが8月の30日とかで、11月1日から(綾野)剛さんのスケジュールを押さえていると。だからそれまでに脚本を完成させないといけなかったんです。ただ僕も薄々、そうなるんじゃないかと心の準備はしていまして(笑)、そのときに温めていたのがこの「3世代の話」なんです。
「ヤクザがいま、かわいそう」という映画は決して撮りたくなくて、いかに自分たちの話にできるかを考えたときに、社会からこぼれ落ちた主人公を拾おうとした人たちの話から始めようと思いつきました。。「疑似家族になるところからこの映画が始まったら、もっと没入できるんじゃないか。まずは1回トライして、ダメだったら書き直せばいいや」と思って書いたら、すごくしっくり来たんですよね。映画的にも映える構成になったと思います。
(c)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
Q:河村さんの反応は、いかがでしたか?
藤井:あの人は、僕が書くと特に何も言ってこないんですよ。気が合うというか……これは(綾野)剛さんにも言われたことなんですが、自分自身が「一言えば十わかる」ようにしている部分はあります。
河村さんが求めているものもわかるし、そのうえで自分がやりたいことを見せて、初稿からほぼ何も言われなかったですね。むしろすごく褒めてくれるから嬉しかったです。
ただ、編集の段階で「このセリフ、なんで何回も言うの?」と言われて、いま言う?とは思いました(笑)。そういう小競り合いはありますが、根底にあるものを信じられているから、やりがいはありますね。
実力がある人でも、組織が受け入れてくれなかったりリスペクトしてもらえなかったりすると100%の力を出せないことがあると思います。認め合っているからこそ120%の力が出しやすいという意味では、河村さんと作るのはめっちゃ大変だけど楽しいですね。