フィルムかデジタルか
Q:今回の撮影はフィルムですか?
西川:今回はフィルムではないです。35ミリでやりたかったですけどね。今は上映が全てデジタルですから、film to filmから、film to digitalの時代になって、余計にお金がかかるようになってしまい、予算的な事情により断念しました。
Q:フィルムをスキャニングしてグレーディング(色調整)という工程ですね。
西川:そういうことですね。フィルム撮影にすることによって、予算的に1,000万から1,300万以上のお金が余計にかかるということでした。そこは節約できないかと。悔しかったですが、笠松さんが、「フィルムでやりたいという監督の気持ちは分かるし自分もそうしたいけど、そのためにシナリオや内容を削ることはしなくていいと思いますよ。」と言ってくれたんです。結果、ALEXA Miniというデジタルカメラで撮影しました。でも、とてもよかったですよ。
Q:ハリウッドの『ジョーカー』(19)も『ブレードランナー 2049』(17)もデジタル撮影だし、もはやフィルムかデジタルかは映画を観ていても分からないですよね。
西川:分かんない。少なくとも私には。フィルムで撮られた作品に対しても、「そうか、フィルムなんだ」みたいな感じのことも多いですもん。なんか情けないですけど。
Q:前作の『永い言い訳』の撮影は16mmフィルムですよね。
西川:フィルムで撮りたいけれど、35ミリほど大きなキャメラじゃなくて、機動力の高い16ミリで撮りたいなと。山崎裕さんが16ミリのキャメラを持っているのを知っていたので、「山崎さんのキャメラ持ってきてもらおうよ!」みたいなノリでしたね(笑)。デジタルで仕上げられるとクリアになるから16ミリの方がむしろ粒子感が残ってフィルムらしさは出やすいですよね。
Q:なるほど。では、笠松さんならやっぱりフィルムだろう。みたいな感じはあったのでしょうか?
西川:そうですね。いつも夢は大きく「できればフィルムでやりたいですね」というところから始めています。
Q:西川作品を観ていると、ハイスピード(スローモーション)のシーンが大体ある気がします。ハイスピードを使う意図というのは何かありますか?
西川:いや、自分がハイスピードを多用してる意識はないんですけどね。まあ象徴的に見えるシーンや、時空が変わる感じのカットで使ってはいますが…。そうですね、今回も結構使いましたかね。回想が多かったり、夢なのか現実なのか分からないというようなシーンで幾つか使いましたね。
Q:ハイスピード撮影ってそれなりに準備が必要なので、当日言ってすぐに出来るものではないと思います。なので、それなりに使うシーンは吟味しているのかなと思ったのですが。
西川:そうですね、その辺は基本的に早くから設計してますね。当日言うと、バタバタしちゃうからね。それでも思いつきで直前に言い出したこともありますよ(笑)。