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『すばらしき世界』西川美和監督 「身分帳」全編に、佐木隆三さんのまなざしを感じました【Director’s Interview Vol.105】

『すばらしき世界』西川美和監督 「身分帳」全編に、佐木隆三さんのまなざしを感じました【Director’s Interview Vol.105】

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街を行き交う人々に目を遣ると、一人一人の物語が立ち上がってくる。『すばらしき世界』を観て試写室から出た直後、なぜかそんなことだけがぼんやりと頭に浮かんだ。翌日、引き寄せられるように書店に向かうと、原案となった佐木隆三の小説「身分帳」を手に入れ、そのまま一気に読みふけってしまった。


「身分帳」の最後には、「復刊にあたって」と題された西川監督のあとがきが寄せられており、この小説との出会いから映画化を決めた理由、主人公の山川(映画での名前は三上)と佐木隆三に対する思いなどが、丁寧で簡潔に、そして熱く綴られていた。それは、映画と原案小説を一気に体験した者にとっては、十分すぎるほど納得のいくコメントだった。


そう、西川監督に聞きたくなるような本質的なことは、そこにバッチリ書いてあったのだ…。


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憧れのキャメラマン・笠松則通



Q:映画を拝見した後「身分帳」を読むと、西川監督が寄稿された“あとがき”に、聞きたいことがほとんど書いてありまして…。


西川:そうでしょう(笑)。


Q:ということで今回のインタビューは、映画制作の技術的なことを中心に、話をお伺いしたいなと。


西川:お、いいですね。分かりました。


Q:まずは撮影についてですが、今回のキャメラマンは笠松則通さんです。西川作品は作品ごとにキャメラマンを変えている印象がありますが、スタッフを決める基準などはありますか?


西川:キャメラマンは、その作品に合っている人を選びたいと思っています。前回の『永い言い訳』(16)では、演技経験のない小さな子どもが出てくることもあり、準備が整っていなくても「今キャメラを回したい!」っていうコンパクトなスタイルに慣れているチームがいいだろうと、ドキュメンタリー出身の山崎裕さんにお願いしました。


今回の笠松さんは昔からずっと憧れていた方で、私たちの世代だと、阪本順治監督や石井聰亙(岳龍)監督の作品で笠松さんの撮った画をたくさん観てきました。緒方明監督の作品もすごく素敵でしたよね。レンズの選び方やカメラワークに劇映画らしいケレン味があって、男の人を艶っぽく魅力的に撮られるイメージもあり、劇場で「いい画だなあ」と思った映画は、大体笠松さんの名前をエンドクレジットで見ることが多かった気がします。



©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会


私もいつかご一緒したいなと思いつつも、笠松さんは非常に硬派なタイプの方だと思っていましたし、自分の作品なんかやってくれるかな…と、憧れが強ければ強いほど、怖気づくところがあったんです。


そんな折、何かのパーティーで李相日監督に声をかけていただき、「笠松さんとはやらないんですか?西川さんの作風とすごく合うと思うんですけどね。」と。「いや、そりゃやりたいですけど…。」と答えたら、「間違いなく日本一のカメラマンだと僕は思っています。西川さんが声を掛けたら喜んでやってくれると思いますよ。」と言ってくれました。


監督って一つの現場に一人ですから、監督同士で交流する機会って実は少ないんです。そんなこともあって、背中を後押しされましたね。いつか男性主人公で硬派な映画を撮るときは、笠松さんにお願いしようと。それで今回ちょうど良い題材が思い付いたので、「ああ、これは笠松さんだ!」とオファーしてみました。




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