美術打合せがもたらす人物形成
Q:スタッフで言うと、撮影は作品ごとに変わっていますが、一方で編集の宮島竜治さんと美術の三ツ松けいこさんは長いお付き合いですね。
西川:宮島さんは1作目からずっとやっていただいています。(映画の一コマである)24分の1秒の感覚って、ズレる人とはズレまくるんですよ。そこの感覚を都度修正するのってすごく大変なんです。編集ポイントの選び方の感覚が、宮島さんとは言外のところで分かり合える部分があるので、他の人に変える理由がないんです。
Q:なるほど。美術の三ツ松さんとはどうですか?
西川:三ツ松さんとの付き合いは、私が助監督をやってる頃からでして、その頃の三ツ松さんは小道具だったのですが、いろんなことを教えてもらいました。三ツ松さんは、リアリズムと生活の匂いのするセットを作るのが得意な美術デザイナーですよね。
私がこれまでやってきた映画は、現実から乖離せず日常の地続きにある世界なので、いつも三ツ松さんとしつこくしつこく話をしながら、細かいところから作っていきますね。とにかく「仏の三ツ松」と呼ばれてるほど柔らかい人ですから、「全然違う世界観のときには違う人ともやってみてね。」なんて言ってくれますけどね。
©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会
Q:「しつこくしつこく話す」とは、撮影前のミーティングを相当重ねる感じでしょうか?
西川:重ねますね。私、美術部(映画制作における美術の部署)とは結構話すんです。この役はこういう人なんだとか、この人の部屋にはこういうものを置きたい、時間経過と共にこう変えていきたいって話すことで、それ自体が自分の中でブレインストーミング的になって、それで人物形成ができていくところがあるんです。そういう意味でも、三ツ松さんとはいろいろ話しながらやっていますね。
Q:現実と地続きの感じはすごくしますね。散らかった家で、洗濯物が干してある感じとかホッとします(笑)。
西川:そうですね、汚すの上手ですよ(笑)。