電車音から方言まで 音へのこだわり
Q:撮影、編集、美術ときて、次は音の話なんですが、北九州(小倉)のソープランドのシーンで電車の音が響いていたのがすごく気になりまして…。あれは実際の店舗で響いている音を再現したのでしょうか?
西川:実際の場所で撮るのが難しかったので、あのシーンはスタジオなんです。ですが、シナハン(シナリオハンティング)のときに小倉の街を歩いて回り、お店が線路近くに立っていることを把握していたので、効果部さんにお願いして電車の音を入れてもらいました。
Q:実は私は北九州出身でして、子供のころ電車に乗っていると、線路沿いにそういうお店がたくさん見えていた記憶があります。でも映画では、お店に入るカットや外観も出てこないし、電車の音が入ってなくても、別に誰も分からないだろうと思ったのですが…。再現性の高さというか、音へのこだわりに驚きました。
西川:見てる人は見てますね。怖いですね(笑)。
Q:地元が出てくるとテンションが上がって、どうしても目ざとくなってしまいますね。市外局番からスターフライヤー、西鉄バスまで、全て地元のものでしたね。「あ、ここ違う!」みたいなものが全然なかった気がします。
西川:見られてますねえ(笑)。やっぱり分かる人には分かる。こっちは土地勘がないから、ちんぷんかんぷんなんですけど。
Q:役者の皆さんの方言も良かったですね。キムラ緑子さんは兵庫出身なのに、北九州弁がうまいなと思いました。
西川:「私は関西だからね」って、苦労されてましたけどね。
Q:北九州市って福岡県なんですが、方言のニュアンスは博多よりも大分や山口に近いと思います。その辺もうまいなぁと感心しました。
西川:その辺の細かな書き分けが私にも難しくてねえ。苦労しました。北九州や博多の方って言葉の歯切れがいいですよね。台詞の決まりがいいというか、女性の方が使う言葉などは特にそう感じますね。緑子さん、ピッタリだったなぁと、自分でも見ていて思いました。
Q:役所広司さんは長崎出身ですしね。もう全然うまいです。
西川:だからね、逆に苦労されていたんですよ。同じ九州だけに、気付くと長崎寄りになっちゃう。宗理起也さんという今回の特殊メイクのスタッフが博多出身だったので、「違います。今のは長崎寄りになってます。」「それは長崎弁です。」って逐一指摘されて、役所さんも「何を言うかこの博多もんが!」とタジタジされてました。刺青のメイクにいつも3時間くらいかかっていたから、よくそこで二人で仲良く練習されてましたね。
Q:役所さんがケンカのシーンで吐く言葉は、自分の中学時代は周りで飛び交ってました(笑)。
西川:ああ、やっぱり、さすが北九州(笑)。