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『ブレイブ -群青戦記-』本広克行監督 役者にもスタッフにも求める、行間を読む力と創造性【Director’s Interview Vol.108】

『ブレイブ -群青戦記-』本広克行監督 役者にもスタッフにも求める、行間を読む力と創造性【Director’s Interview Vol.108】

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他の日本映画と逆のことをする



Q:本広監督は日本映画の中でも予算がある作品が多いと思いますが、ハリウッド映画とも肩を並べるくらいの、作品が持つメジャー感がとても好きです。作品にその辺を纏わせる秘訣みたいなものはあるのでしょうか。


本広:多分、他の日本映画と逆のことをやってるからかもしれません。子供の頃から思っていた日本映画のイメージって、犯罪物が多くて題材が重くて暗い印象があって、そういうものが褒められていた傾向があったと思うんです。僕は、今村昌平監督が作った学校(横浜放送映画専門学院 現:日本映画大学)の出身なのですが、今村監督の映画って基本どんよりしてるんですよ(笑)。ところが、日活時代の作品だと、『豚と軍艦』(60)とか、めちゃめちゃエンターテインメントなんです。街に豚をいっぱい放して、それで逃走劇をやるって、すごい話だなと。


でも、日本映画界全体がだんだん文学の方に傾倒していって、人間の情念のようなものを描く作品が増えていく。それが何だかすごく嫌だったんです。重い内容の映画を観ると、映画館を出ても引きずってしまうんですよね。結局僕はライトコメディーが好きなんですね。



©2021「ブレイブ -群青戦記-」製作委員会 ©笠原真樹/集英社


また、自分の撮影方法でいうと、普通のシーンは常にカメラが動いてるんです。カメラが動くということは、当然見える範囲が広くなるので、美術さんも全体を装飾する必要がある。それで全体的に豪華に見えているかもしれませんね。


逆に、例えば語り合うようなすごくいいシーンでは、カメラもワンカットで全然動かさないようにしています。映画ってカメラがどっしり構えてるほうがいい画に見えて、確かに昔は相米慎二監督の映画なんか「かっこいいなぁ」て思っていたのですが、自分にはあれほどの演出力はないなと思い、今の自分のスタイルを作りましたね。

 

昔は本当にすごいですよ。朝からずっとリハーサルをやって、夕方ぐらいからやっと撮影を始めても「芝居が駄目だ」ってその日は撮影しないとか。今じゃ考えられないですよね。やっぱり自分はそこまでは出来ないなと。なるべくその日の時間どおりに撮って、スケジュールも遅れないようにして、雨でも出来るだけ撮ったりしていますね。


Q:時間もきっちり2時間に収めると。


本広:そうそう。本当に大事ですよね。2時間超えた映画を作るとですね、後半トイレに行く人が出てくるんですよ。めちゃめちゃいいところで席を立つんです。「ここで立つか〜、2時間超えると膀胱持たないかぁ〜」って(笑)。確かに自分でも2時間超える映画を観るときは、意識して最初にトイレに行っておきますからね。だから1時間40分ぐらいを目指して作ると、完成するとちょうど1時間50分位になるんです。今回は出演者が多くて少し長くなりましたが、エンドロールも余韻に浸れると思いますよ。


Q:昨年は『ビューティフルドリーマー』(20)のような作品も作られて、ジャンルや規模を横断してご活躍されていますが、今後はどのような映画を作っていきたいですか。


本広:今までは映画や舞台など、ずっと仕事を続けて来ましたが、このコロナで初めて仕事が途切れたんです。去年開催予定だったオリンピックは観たかったら、開催中は仕事を入れないようにキープしていたのですが、仕事のスケジュールも全部変更になったので、キープしていた休みもリセットされてしまいましたね。



『ビューティフルドリーマー』は、このままパート10ぐらいまで作ってやろうかと思っています(笑)。この映画の舞台が大学の映研なので、代々引き継がせて代々作って行けば、ずっと続けれられるなって(笑)。


最近は配信の企画も声をかけてもらったり、アイドルのコンサート演出の話があったり、もう何でもやっていこうと思っていますね。



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監督:本広克行

1965年生まれ。香川県出身。

高校を卒業後、映画学校、映像制作会社を経て、1996年に初の映画監督作品『7月7日、晴れ』で劇場デビュー。2003年に公開された映画『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』では、日本映画(実写)興行収入記録歴代一位の座を獲得。その後もドラマ・演劇・アニメ・ゲーム・MV・ショートムービー・CMと、活動の場は多方面に渡る。2015年公開の映画『幕が上がる』(平田オリザ原作・ももいろクローバーZ主演)では、舞台版の演出も担当。最近作は映画『亜人』(2017年公開)、『曇天に笑う』(2018年公開)。2019年にはHTB開局50周年ドラマ『チャンネルはそのまま!』で総監督を務め、2019年日本民間放送連盟賞のテレビ部門でグランプリを受賞。舞台演出では 『PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice』、『転校生』、『姫はくノ一』など。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。



『ブレイブ -群青戦記-』

3月12日(金) 全国東宝系にてロードショー

©2021「ブレイブ -群青戦記-」製作委員会 ©笠原真樹/集英社

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