日本映画界エンターテインメント大作の第一人者とも言える本広克行監督。そんな本広監督の最新作が、3月12日に公開される人気漫画原作の『ブレイブ -群青戦記-』だ。一流アスリートが集う全国トップクラスの強豪高校が、学校ごと戦国時代にタイムスリップ、学生アスリート集団が織田信長の軍勢と戦うことになっていく…。日本映画には珍しいSFアクションの設定だが、本広監督の手によって手に汗握るエンターテインメント大作に仕上がっている。
『踊る大捜査線 THE MOVIE』(98)以降、常に第一線を走り続ける本広監督、その演出力とは?監督に話を伺った。
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お金と労力がかかる時代物
Q:今回は『曇天に笑う』(18)に続く時代物です。本広監督は時代物をそれほど手がけていない印象がありますが、時代物の製作は現代物と比べてどうですか?
本広:歩き方一つとっても、ちゃんと作法を知らないといけないので、時代物はかなり難しいです。僕はその辺が全然わからないので、所作指導の先生方に全てお任せして、色々と教えていただきました。アクションに関しても時代物に長けた方にお願いしています。
あの山田洋次監督が『たそがれ清兵衛』(02)まで時代物に手を出さなかったのも、よく分かりますね。昔はスタッフが厳しくて、監督が「知らない」では通りませんでしたから。
さらに今は昔と違って、モノが少ないんです。例えば馬も少ないし、甲冑も少ないので、武者はCGで増やしています。甲冑を着けると髷も結う必要が出てくるし、当然刀や武器も揃えなければいけない。それを出演者一人一人にやっていくと、とんでもないお金がかかってくるんです。
©2021「ブレイブ -群青戦記-」製作委員会 ©笠原真樹/集英社
Q:剣道の防具一式揃えるだけでも数万円はかかりますからね。甲冑なんて当然もっと高いですよね。
本広:そうなんです。とにかくお金がかかるんですよ。撮影では、鉄の甲冑だと重くて動けないので、軽い素材の甲冑を使うのですが、それは鳴る音も軽いんです。明らかにプラスチックのような音が「カチャカチャ」鳴ってしまう。なので、ダビングで整音作業をするときに、その音を全部外して重厚な音に付け替えています。本当に色々大変ですね。