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『ホムンクルス』清水崇監督と解体する、「自分史上最もカッコいい」映画の内部【Director’s Interview Vol.112】

Ⓒ2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

『ホムンクルス』清水崇監督と解体する、「自分史上最もカッコいい」映画の内部【Director’s Interview Vol.112】

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綾野剛・成田凌と高め合った撮影現場



Q:綾野剛さんと成田凌さんの演技もすさまじかったですが、おふたりとも演技のアプローチ自体は異なりますよね。


清水:そうですね。アプローチは違えど、こだわりまくるふたりでした(笑)。綾野くんはいま、とにかく勢いがありますよね。存在感と自分が今までやってきた経歴がうまく合致してくる年頃だし、そこを消したくはないんだけども、役どころとしては気力も感情も記憶も全部失っているから、いかにそのみなぎるパワーを抑えるかが大変でした。時として、オーラが出すぎてしまうんですよね。そこが人気なんだと思うし、単なるホームレスで無い稀有な存在感が、この作品にも合っていましたね。


『ホムンクルス』は「人と人が出会う」がとても大事で、何もない男である名越が人と出会うことで自分や社会、周囲の人間に意味を見出していく作品なんです。その真逆となる存在が、成田くん演じる伊藤です。撮影前に「自分自身の存在意義を見失っている伊藤に、観ている人が自然に入り込めるようにしたい」と伝えたのですが、見事に体現してくれました。


『ホムンクルス』Ⓒ2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ


「伊藤はこの“実験”で何かが見えると思っていて、いま自分は誰よりも神に近い存在にいると感じている。そこに意義を見出しているから、まくしたてるように話してほしい」とリクエストしたら、「なるほど。1回やってみますね」とすぐ対応してくれました。全部順撮りというわけにはいかないから、綾野くんや成田くんとは「ここではこういう状態に陥ってるからこういう精神レベルだろう」というようなことをシーンごとに話し合って作っていきました。「なぜここでこういうことをするのか」は疑問に感じるなら訊いてほしいし、僕自身が話し合うスタンスを望んでいた。その上、ふたりとも、言われたとおりだけでやるタイプじゃないから、より面白かったです。


「監督がこう言ってきたから、それを使ってこういうのはどうだろう」といった芝居を見せてくるから、それを観て僕も「それがありなら、こっちのアプローチはどう?」と新たに提案できる。そういったものの積み重ねで出来ていきました。


Q:それこそ、綾野さんはかなりアイデアを提案するタイプという印象があります。


清水:これは綾野くんに限らず、色々な俳優さんに話を聞くと、そういう風に俳優から提案できる場は少ないみたいですね。監督や作品にもよるのかもしれませんが、僕自身は俳優さんに監督や俳優が考えていた想定を超えていってほしいんですよ。


監督って作品を全体で見ているから、各キャラクターにフォーカスしているわけじゃない。だからこそ俳優さんは、自分が演じるキャラクターを監督以上に把握して、生きていてほしいんです。監督に言われたことなんかよりも“先”を考えていたり、自分の中に持っていたりしてほしい。僕はどうしてもそんな風に貪欲に思っちゃうんですが、綾野くんも成田くんもそういった精神をちゃんと持って臨んでくれましたね。





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