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『ホムンクルス』清水崇監督と解体する、「自分史上最もカッコいい」映画の内部【Director’s Interview Vol.112】

Ⓒ2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

『ホムンクルス』清水崇監督と解体する、「自分史上最もカッコいい」映画の内部【Director’s Interview Vol.112】

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変わりつつある、ホラー映画市場



Q:たとえばいまNetflixのオリジナル作品でホラーやサイコサスペンスが人気ですが、清水監督ご自身はこうした流れをどうご覧になっていますか?


清水:確かに配信だとホラーは多いですよね。僕も企画を求められる機会は増えました。


VHSが流行るまで、ホラーっていまほど市民権がなかったんですよ。海外のB級・C級のホラーは、一部のファンは見たがっていても配給権が買われず、なかなか入ってこなかった。ところが、VHSが台頭してくると権利が安いぶん、「出せば売れる」ということでホラーが一気に国内でも観られるようになりました。


一昔前って、女性はなかなかホラー好きと公言出来ない時代でしたが、実は女性のほうがホラー好きが多かったんですよ。昔からホラー漫画のほとんどが、「ハロウィン」などの女性向けでしたし。その辺も今や、変わってきた感がありますね。

 

『ホムンクルス』Ⓒ2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ


ただ最近は、市民権を得すぎてつまらないな、と思うところもあります。『エクソシスト』(73)や『オーメン』(76)あたりから有名な俳優でもホラー作品に出るようになって、とはいえ日本じゃまだまだキャスティングをするとホラーって敬遠される向きもあって……中途半端な状態なんですよね。市民権がない時代のほうが、「こんな怖いものを観たらどうなってしまうんだろう」と前情報だけでゾクゾクするというか、“掘り出し物感”はありました。


Q:ホラー市場が拡大したがゆえに、ひそやかな怖さがなくなってしまったというか……。


清水:そうです。“連れ込み宿”だった淫靡で卑猥な感覚が、ラブホとかブティックホテルなんて呼ばれたら行き易く、でも別の魅力が失せた…みたいな“危なげな匂い”が薄まってしまった。ホラーも、親近感は昔よりあるとは思うんですけど…難しいところですね。だから、「ホラー映画ばっかり撮ってる監督が作ったらしいよ」といって前情報なしに『ホムンクルス』を観てくれた人が、「じゃあこの監督のホラー作品も観てみるか」となってくれたら嬉しいですね。


僕の周りのプロデューサーたちは、「これをきっかけにどんどんホラー以外にも挑戦してほしい」と言ってくれています。僕自身はずっと昔からそのつもりはあるんですけど…。



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監督:清水崇

1972年7月27日生まれ、群馬県出身。ブースタープロジェクト所属。大学で演劇を専攻し、同郷の小栗康平監督作『眠る男』(96)の見習いスタッフで業界入り。小道具、助監督を経て、自主制作した3分間の映像を機に98年、関西テレビの短編枠で商業デビュー。東映Vシネマで原案・脚本・監督した『呪怨』シリーズ(99)が口コミで話題になり、劇場版(01,02)を経て、USリメイク版“The Grudge”:邦題『THE JUON/呪怨』(04)でハリウッドデビュー。日本人初の全米興行成績No.1に。続く“The Grudge 2”:邦題『呪怨パンデミック』(06)も全米No.1に。近作に『9次元からきた男』(16)、『ブルーハーツが聴こえる/少年の詩』『こどもつかい』(共に17) 『犬鳴村』(20)『樹海村』(21)など。ジャパンホラーの巨匠としてホラーやスリラーを中心に、ファンタジーやコメディ、ミステリー、SFなど様々なジャンルに取り組んでいる。 



取材・文:SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema




『ホムンクルス』

4月2日(金) より期間限定公開

配給:エイベックス・ピクチャーズ

Ⓒ2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ


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