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『ノーカントリー』の3人のオールドメンと『ファーゴ』への繋がり【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.56】

『ノーカントリー』の3人のオールドメンと『ファーゴ』への繋がり【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.56】

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『ノーカントリー』と『ファーゴ』を繋ぐ黒いブリーフケース






 『ファーゴ』と照らし合わせるなら、ジョシュ・ブローリンが扮するルウェリン・モスは巻き込まれる市民、つまりはマーティン・フリーマンのレスター・ナイガードなどに相当するわけだが、ルウェリンがひと味違うのは彼がベトナム帰還兵であり、戦闘やサバイバルのスキルを持っているということ。雪に閉ざされた街の一般人たちとは違い、銃の扱いは慣れたもので、追っ手の殺し屋に対して逃げながらもある程度は応戦ができた。そもそもことの発端からして積極的に渦中に身を置いており、逃げはするもののトラブルの原因である大金そのものは手放そうとしないあたり、一概に「巻き込まれた」とは言い難いキャラクターである。


 そういうわけで『ファーゴ』の市民たちとは前提がやや異なるようだが、しかしルウェリンと彼らを結びつけるものがある。ほかでもない大金の入った黒いブリーフケースであり、全く同じものが『ファーゴ』にも登場するのだ。


 まず映画版では狂言誘拐(狂言でなくなってしまうのだが)で得た身代金が入れられたものとして登場し、誘拐犯の片割れが大金を独り占めするため雪の中に埋めてしまう。結局彼がその金を手にすることは永久になく、ブリーフケースは埋められたままになるが、ドラマ版ではのちに第三者によって掘り起こされたことがわかる(映画版とドラマ版の数少ない直接的なリンク要素だ)。


 つまり、この黒いブリーフケースを最初に手にしたときから、ルウェリンがろくな目に合わなそうなことはなんとなく示唆されているというわけだ。悲惨な結末を迎えた麻薬取引の現場を目の当たりにしながら、明らかに危険がまとわりついている大金を持って逃げ果せようとする彼は、観ているこちらにはだいぶ無謀に見えるのだが、しかし、それは『ファーゴ』の市民たちも同じだろう。前回の記事でも書いたように、一見事件に巻き込まれたかに見える彼らには、つねに引き返すチャンスが与えられていた。しかし、いつしか彼らは自分から事態に深く踏み込んでいくようになる。そう考えれば、彼らとルウェリンは本質的には同じ人々なのだろう。全員がそれぞれの「黒いブリーフケース」を手に取ってしまったのである。




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