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『ファーゴ』幸せは欲を超えたところにある。コーエン兄弟の傑作、その魅力
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コーエン兄弟の傑作、その魅力の秘密
冬になると見たくなる映画があるとすれば、雪国育ちの筆者にとって『ファーゴ』(96)は、そのひとつ。言わずと知れた、ジョエル&イーサンのコーエン兄弟の代表作だ。舞台は兄弟の故郷でもある米ミネソタ州。荒涼とした寒々しい雪景色が、とにかく鮮烈な印象を残す。
改めて『ファーゴ』のストーリーを振り返ってみよう。借金を抱えたカーディーラー・ジェリーが、妻の偽装誘拐を画策し、ふたりのならず者カールとゲアを雇う。妻の父は成功した実業家で、身代金を出すのは容易なはず。かくして計画は実行されるが、カールとゲアが逃走中に警官ら3人を殺害するハメになったことから歯車が狂いだす。捜査に当たった身重の警察署長マージは冷静な推理で、少しずつ事件の真相に迫る。一方、身代金の受け渡し時にも不測の事態が起こり、さらなる死体が転がることに……。
映画の主人公は一応はマージだが、物語の3分の1を経過してから彼女が登場するので、むしろ群像劇というべきだろう。欲に憑かれてしまった人々が右往左往し、その結果悲劇が拡大していくストーリーはサスペンス調だが、コメディでもあり、同時にリアルな人間ドラマでもある。物語も寒々しいが、それだけでは終わらない。1996年度のアカデミー賞では7部門にノミネートされた、そんな本作の魅力を改めて検証してみよう。