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『ファーゴ』幸せは、欲を超えたところにある。コーエン兄弟の傑作、その魅力

(C)2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

『ファーゴ』幸せは、欲を超えたところにある。コーエン兄弟の傑作、その魅力


傑作『赤ちゃん泥棒』の、その先へ



 アカデミー賞受賞のもう一部門は、コーエン兄弟にあたえられた脚本賞だ。入り組んだ状況作りの妙やセリフの面白さは言うまでもないが、何よりここで心を動かされるのは、人間の慎ましい善良性というテーマだ。


 『ファーゴ』の主要登場人物の多くは、欲を出して失敗する。対して主人公マージは警察官の職務に忠実で、家に帰れば家事もこなす、ごくごく普通の庶民。絵描きの夫ノームと深く結ばれていることは初登場の場面からも明らかだ。殺人事件の勃発によって朝早く電話で起こされた彼女は、ノームに“まだ寝てていい”と言うが、夫はイヤそうなそぶりも見せず、起きて彼女のために朝食をつくる。昼になると、彼は警察署に立ち寄り、妻とランチをともにする。これらのエピソードは、犯罪劇内の一服の清涼剤として機能するだけでなく、地道に生きる者のささやかな幸福を賛美しているかのようだ。



(C)2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.


 『ファーゴ』の9年前にコーエン兄弟が監督した『赤ちゃん泥棒』(87)と見比べると、それはより鮮明になる。『赤ちゃん泥棒』は子どものできない夫婦が、近隣で五つ子が誕生したことに不公平を感じ、そのひとりを誘拐するという話。この夫婦は決して悪党ではないのだが、子どもができない現実を受け止めきれていない。大人になりきれない人々の典型で、その気持ちがわかるから、見ていて自然と感情移入してしまう。手前味噌だが、『赤ちゃん泥棒』を大学生のときに見た筆者は号泣してしまった。



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