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『100日間生きたワニ』上田慎一郎監督&ふくだみゆき監督がアニメに持ち込んだ「異例」と「異物」【Director’s Interview Vol.126】

©2021「100⽇間⽣きたワニ」製作委員会

『100日間生きたワニ』上田慎一郎監督&ふくだみゆき監督がアニメに持ち込んだ「異例」と「異物」【Director’s Interview Vol.126】

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周囲に心配されながらも、こだわって入れた「間」



Q:尺(上映時間)は割と自由だったのでしょうか?


上田:そうですね。ただ、120分よりは60分くらいを目指してはいました。伸びたり縮んだりを繰り返していて、アニメ映画の尺の感覚がなかなかつかめなかったですね。


ふくだ:実写と同じ感覚でシナリオを書いたら、絵コンテにしてVコン(ビデオコンテ。絵コンテの動画版)で繋げたときに、思ったよりもギュッとしてしまったんです。アニメって、実写よりもテンポよく会話が進んでいくんですよね。上田さんとそれを観て、「このテンポ感じゃないよね」と話しました。


それで、二人で実際にセリフを読み合わせて、録音したものを制作チームに送って「このテンポ感でやりたいです」と共有を図りました。



『100日間生きたワニ』©2021「100⽇間⽣きたワニ」製作委員会


Q:本編を拝見したときに、カットとカットの間にコンマ数秒、間(ま)というか、余韻が残りますよね。昨今のアニメの文脈から考えると非常に特異で、実写的な演出だと思っていました。


上田:そこがこだわったことのひとつではあるのですが、大変でもありました。アニメ作品の場合、普通は「このカットは3秒」といったような指定があって、そこに合わせてセリフを入れていくんです。


Q:「セリフボールド」というやつですね(アニメのアフレコの際は、往々にして画面に「セリフボールド」と呼ばれる指定が表示され、それに合わせて演者はセリフを当てていく)。


上田:そうそう。ただ僕らは、セリフによって尺が影響を受けていくだろうなという考えだった。だから、あえて尺を指定しなかったんですよ。声を録った後にもう一回尺を調整し直して、さらに無言の間を入れています。ただ、特殊なやり方でもあったから周りからは心配されましたね。


ふくだ:「こんなに間をとって大丈夫?」とは言われましたね。制作チームからすると、いままで作ってきたアニメとは全然テンポ感が違うでしょうし、あまりない経験だったんじゃないかな(笑)。絵のテイストも、描き込みがすごく多いわけではなくてシンプルなものだったから、「この絵で、この間で大丈夫ですか……?」と不安がらせてしまったのですが、そこは自分たちを信じてもらい、押し通させていただきました(笑)。


上田:僕らはアニメをずっと作ってきたわけではないし、“本道”で勝負しても仕方がないと思っていたんです。自分たちだからできたアニメ映画にすべきだし、本道と真逆のことをしようと考えていましたね。




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