©2021「100⽇間⽣きたワニ」製作委員会
『100日間生きたワニ』上田慎一郎監督&ふくだみゆき監督がアニメに持ち込んだ「異例」と「異物」【Director’s Interview Vol.126】
最後の一手は、観客に。「完成させてはいけない」想い
Q:上田さんは『エヴァンゲリオン』、ふくださんはMCUシリーズなどがお好きかと思いますが、そうした趣味は共有しますか? ドラマ「コントが始まる」は一緒に観ていたと伺いましたが。
ふくだ:共有しているものとしていないものがありますね。バラエティやお笑い番組は一緒に観ますが、MCUは私は大好きだけど上田さんはつまみ食いくらい。『エヴァ』は上田さんがゴリゴリに楽しんでいますが、私はまだ見れてなかったり……。上田さんが好きすぎるがゆえに、まだ観ていない名作が滅茶苦茶あるんですよね。
上田:俺が薦めるよりも、SYOさんが薦めたほうが観てくれる気がしますよ。俺が薦めると押しつけがましくなっちゃうから……(笑)。
ふくだ:お笑い芸人さんが、コンビでかわいがる後輩が違うような感じです(笑)。「ここは私のテリトリー!」みたいなものが、何となくありますね。
Q:実にわかりやすい例え……!
上田:全然話は変わってしまいますが、いま「コントが始まる」のお話をちらっとされていたじゃないですか。今回、神木隆之介くんと何回か取材を受けているなかで彼が「「コントが始まる」の現場がすごく愛おしかった」と話していて、嫉妬しました(笑)。
ふくだ:へぇー! それはそう思っちゃうね(笑)。今回、神木さんは1日しか一緒にいられなかったし、長い方でも2日間くらいだったから、実写の現場ほどの密度は難しかったんです。
上田:神木くんが「コントが始まる」のことを「終わりたくなかった」と言っていて、(劇中のキャラクターとセリフがかぶるため)虚実ないまぜやん!と思いましたね(笑)。
Q:虚実ないまぜというところでいうと、『100日間生きたワニ』もいまの時期にすごく刺さる作品だと思います。上田監督がさっき「観た人が自分の話をする」とおっしゃっていたように、作品という“虚(フィクション)”と、観客が生きる“実(リアル)”がシンクロして初めて作品が完成するというか。
上田:いや、本当に。“最後の一手”はお客さんに残しておこう、完成させてはいけないという気持ちがありますね。
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監督・脚本:上田慎一郎
84年生まれ、滋賀県出身。中学時代に自主映画の制作をスタート。09年に映画制作団体PANPOKOPINAを結成し、15年にオムニバス映画『4/猫』の1編『猫まんま』の監督で商業デビュー。劇場長編デビュー作『カメラを止めるな!』(18)が、口コミを中心に爆発的な評判を呼び、当初2館の公開からスタートした本作は最終的に動員数220万人を突破。社会現象ともいえる大ヒットとなった。その他主な監督作に、『お米とおっぱい。』(11)、『イソップの思うツボ』(19年※浅沼直也との共同監督)、『スペシャルアクターズ』(19)など。また、妻であり本作の共同監督でもあるふくだみゆきの監督作『こんぷれっくす×コンプレックス』(17)ではプロデューサーも務めている。
監督・脚本:ふくだみゆき
87年生まれ、群馬県出身。13年に初の監督作となる短編実写映画『マシュマロ×ぺいん』を制作、国内で複数の映画賞を受賞。15年制作のアニメーション映画『こんぷれっくす×コンプレックス』は、毎日映画コンクールアニメーション賞を受賞。歴史ある同コンクールで、自主制作アニメーション作品として初の受賞を果たし注目を集める。
取材・文:SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema」
『100⽇間⽣きたワニ』
7⽉9⽇(⾦)全国公開 配給︓東宝
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