©2021「100⽇間⽣きたワニ」製作委員会
『100日間生きたワニ』上田慎一郎監督&ふくだみゆき監督がアニメに持ち込んだ「異例」と「異物」【Director’s Interview Vol.126】
自分たちが観たいものは、原作の“その先”だった
Q:中村倫也さんと山田裕貴さんのインタビューを読んだのですが、「普通に会話している感じだった」(「CUT」2021年6月号)とおっしゃっていましたね。
上田:最初に、コンセプトとして「邦画実写のようなアニメを作ろう」を設けて、役者にもアフレコ前に伝えました。セリフボールドはあくまで目安で、そこからはみ出ても大丈夫だし、相槌を打っても、息継ぎを入れてもいい。何点か“釘”は打たれていますが、その間は自由に泳いでください、と言いましたね。ちょっと言い損じっぽいところも、そのまま残してあります。
Q:そうした「生っぽい」演出プランは、初期から一貫して持っていたものなのでしょうか。
ふくだ:もともとの原作が、余白をすごく感じさせるものじゃないですか。コマとコマの間、セリフとセリフの間を読者が想像するような余白のある作品だから、その空気感を映像に持ってきたいと思っていましたね。
上田:すごく実写っぽい作品ですよね。
『100日間生きたワニ』©2021「100⽇間⽣きたワニ」製作委員会
Q:あとやはりお伺いしたいのは、本作の構成の見事さです。原作の内容は全体のちょうど半分に収め、後半は完全オリジナルの“後日談”になる。コロナ禍とシンクロする描写もあって胸に迫りますが、脚本を相当書き直したと伺いました。
上田:最初は、後日談は5分くらいのイメージで、100日間を再構成してかつ視点を変えるようなものを想定していたんです。もちろん最終的に、前半部分で視点が変わる――周りのキャラクターが見たワニを描くというアイデアは残っているのですが、その先の物語を描かなくちゃいけないと思いました。
やっぱり、僕たち自身も何を観たいかといったら、原作をただ忠実にアニメ化したものではなく、その先の物語を描いてくれるものだったんです。