©2021「100⽇間⽣きたワニ」製作委員会
『100日間生きたワニ』上田慎一郎監督&ふくだみゆき監督がアニメに持ち込んだ「異例」と「異物」【Director’s Interview Vol.126】
「観客を信じる」作り方を選択した
Q:タイトルも、そこに合わせて『100日間生きたワニ』に変更されたんですよね。
上田:そうですね。これで『100日後に死ぬワニ』としてしまったら、原作通りなのかな?と思う人が多いかなと感じました。
ふくだ:あと、映画を観た後にしっくり来るのだろうか?という懸念もありましたね。
Q:おっしゃる通り、原作では、ワニが亡くなるまでのある種のカウントダウンを読者がリアルタイムで経験していく、つまり100日という同じ時間をワニと読者が共有するつくりが大きかったと思います。ただ、それを映画というフォーマットでやると齟齬が生じてしまう。
上田:そうなんですよね。
Q:そうした“共有”は、映画の中で非常にうまく処理されていると感じました。亡くなった後の世界を描くという演出もそうですし、他にも自分の好きなお店がなくなってしまうなど、コロナ禍で僕たちが経験・共有している“喪失感”がしっかり描かれている。だからこそ、胸に迫ってくるものがあります。
『100日間生きたワニ』©2021「100⽇間⽣きたワニ」製作委員会
上田:すごく嬉しいです。そこは、僕たちも意識していたことですね。
Q:となると、観客の皆さんの反応が気になりますね……。
ふくだ:いや、本当に。すごく気になります。
上田:このタイトルから想像されるイメージよりも、かなり渋いことをしているので(笑)、どういう風に受け止めていただけるのか、とても興味があります。僕たちは今回、「観客を信じる」作り方をしたと思うんです。どこまで語って、どこまで語らないかを、何度もディスカッションを重ねながら作っていったので……。
ふくだ:これは言いすぎじゃないか、これは言わなさすぎじゃないか、といったようなことを最後の最後まで迷いながら作っていきましたね。
上田:試写が終わったあと、観てくれた皆さんが自分の話をしてくれるのが嬉しいんですよね。今回はそういった映画になっていますし、作品とその人の“掛け算”で観ていただけたらな、とは思います。