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『返校 言葉が消えた日』ジョン・スー監督 台湾史の暗部、白色テロ時代を描いたゲームを映画化する【Director’s Interview Vol.128】

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『返校 言葉が消えた日』ジョン・スー監督 台湾史の暗部、白色テロ時代を描いたゲームを映画化する【Director’s Interview Vol.128】

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ゲームから映画へ、メディアを越える脚本術



Q:ゲームと映画ではメディアが違うので、物語を語る方法が必然的に変わると思います。原作はストーリーの評価が非常に高い作品ですが、脚本はどのように執筆されましたか?


スー:脚本の執筆は非常に困難な作業でした。ストーリーの進め方が、ゲームと映画では根本的に異なるからです。ゲーム(「返校 -Detention-」)の場合、プレイヤーが謎を解き、たとえばドアを開けると物語が進むという形式ですが、映画はキャラクターを中心に据え、登場人物の会話を描き、その内面に迫っていかなくてはいけません。そこで脚本を書くにあたり、ゲームからキャラクターに関する要素をなるべく拾い集め、掘り下げ、そして膨らませていくという形で執筆を進めていきました。


Q:すると、物語全体というよりは、登場人物のストーリーをどう構築するか、という観点が先にあったということでしょうか?


スー:キャラクター先行というよりは、キャラクターと(ゲームの)物語の関係性を考えたということです。ゲームにはたくさんのメタファーが含まれていますが、その意味はあまり明示されません。そこで、まずはゲームを何度もプレイして、メタファーや象徴的な要素の意味を見極めました。それらがキャラクターにどんな影響を与えるのかを考えながら、脚本を仕上げていったのです。



『返校 言葉が消えた日』© 1 Production Film Co. ALL RIGHTS RESERVED.


具体例を挙げると、映画にはウェイ・ジョンティンが逆さ吊りにされるシーンがありますが、これはゲームにも登場する場面です。しかし、ゲームをプレイすればわかることですが、あれは現実に起きた出来事ではありません。では、なぜ現実ではない場面が必要だったのか、そこにゲームの製作陣はどんな思いを込めたのか。そういったことをきちんと理解した上で、人物の心情を脚本に盛り込んでいきました。


Q:今おっしゃったウェイ・ジョンティンのシーンもそうですが、ピアノやペンダントなど、ゲームの要素がいくつも登場するのは、原作ファンが楽しめるポイントだと思います。映画の物語を構築する上で、ゲームの要素を組み込むことにはご苦労もあったのではないかと思います。


スー:ゲームに登場するピアノは、いわゆる謎解きの道具、ギミックです。しかし、映画に登場させるとなると、それが単なるギミックでは意味がありません。きちんと物語上の役割を持たせなければいけない。ゲームで流れているメロディは「雨夜花」という曲ですが、この曲の意味は何なのか、なぜピアノが登場するのか、ということを考えました。たとえば、ファン・レイシンとチャン先生の恋を象徴するものとして使えるんじゃないか、とか。そうやって試行錯誤した結果、映画で使えるものをピックアップしていったわけです。




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