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『返校 言葉が消えた日』ジョン・スー監督 台湾史の暗部、白色テロ時代を描いたゲームを映画化する【Director’s Interview Vol.128】
映画ならではの視覚表現、ロケ地へのこだわり
Q:原作ゲームは2Dの横スクロールで、この映画にもゲームを再現したようなショットが登場します。その一方で、奥行きを活かしたショットや、ゲームのイメージを象徴的に表したようなショットもたくさん入っていますよね。ここには監督独自の想像力があると思うのですが、映画ならではのビジュアル表現は、どんな発想で生まれたのでしょうか。
スー:おっしゃるとおり、原作ゲームは2Dの横スクロールなのですが、これはある種の劇場的な手法です。舞台を観劇しているような感覚をプレイヤーに与えるものですね。映画化の大きな課題は、こうした表現をいかに立体化するかということでした。
たとえば、非常に奥行きのある廊下のショットが出てきますが、これは、ゲームにもあった長い廊下を逃げるシーンを、立体的な通路として、しかも無限に伸びる長い通路として見せるのはどうかと考えたものです。そこに、いかにも学校らしい窓があったり、同時に「忌中」という巨大な文字など、まったく学校らしくないホラー的な雰囲気があったりと、いろんな要素を追加しながら完成させました。
また別の場面では、とある人物が極限まで追い込まれ、現実と夢の区別がつかなくなり、時間の感覚さえ失ってしまった精神状態を表現するため、長い廊下を利用し、ひとつの場面に象徴的な要素を集約させています。
『返校 言葉が消えた日』© 1 Production Film Co. ALL RIGHTS RESERVED.
Q:この作品はロケ撮影が多いように見受けられました。ロケ地や美術へのこだわりをお聞かせください。
スー:ほとんどがロケ撮影でした。台湾では少子化が進んでいて、廃校となった学校が多いので、そうした廃校の中から最も適した学校を探したんです。最終的に、台湾の南にある、1960年代に建てられた学校を見つけました。廃校になってから17年間も放置されていた学校でしたが、ゲームの学校のデザインに似ていたんです。内部を改装して教室のシーンにも使いましたし、ほぼそのままの状態で使ったシーンもあります。
また、ウェイ・ジョンティンが牢屋に入っているシーンは、実際に白色テロの時代に使われた牢屋で撮影しました。当時の被害者が投獄された場所で、今では負の歴史を記憶するための記念館になっている施設です。普段は当時の生活を伝える展覧会や催し物が開かれているので、しょっちゅう映画の撮影に使われるわけではありません。この映画のメッセージと、記念館が伝えたいメッセージが一致するということで、今回は快く貸していただけました。
Q:驚きました。スタジオに牢屋のセットを作ったものと思っていました……。ちなみに、スタジオで撮影したシーンはあったのでしょうか?
スー:学校の講堂に人々が集まっているシーンはスタジオで撮影しました。学校のシーンでは、実際の学校以外の建物を合成し、校舎の数を多く見せることもしています。