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『ディナー・イン・アメリカ』アダム・レーマイヤー監督 畑に種を撒き、作物を育てるかのごとき映画作りとは【Director’s Interview Vol.144】

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『ディナー・イン・アメリカ』アダム・レーマイヤー監督 畑に種を撒き、作物を育てるかのごとき映画作りとは【Director’s Interview Vol.144】

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ある日少女の部屋に、彼女が偏愛するバンドのリーダーが突然闖入、2人で逃避行をすることに…。こんなオタク女子のごとき妄想を、パンクロックへの愛をベースにユニークなラブストーリーへと昇華させた映画『ディナー・イン・アメリカ』。


独特の語り口と「間」でストーリーをドライブさせ、アメリカ社会の病んだ側面を家族の食卓(ディナー・イン・アメリカ)を通して象徴的に描いており、安易な解釈を許さない奥行きの深さも備えている。そんな作品の底に流れるのは、純粋なまでの音楽への愛。監督が最も好きだと語るシーンでは、惹かれあう主人公2人が、一つの曲を即興で作り上げる。2人の共同作業が一つの作品を生み落とす瞬間を、静かに慈しむような目線で描いており、鮮烈で感動的だ。


このキュートにして刺激的な映画を作り上げたのは、一見いかつい髭面のバンドマン、アダム・レーマイヤー。惜しげもなくたっぷりと時間をかける独特の創作スタイルと、本作に投影した音楽への思いを語ってもらった。


Index


パンクシーンへのラブレター



Q:監督は本作を「今の私を形作った90年代のパンクシーンに捧げるラブレター」と表現されています。どんな風にパンクと関わってきたんでしょうか?


レーマイヤー:パンクのみならず、いろんなジャンルの音楽が好きなんです。ネブラスカ州で育ったんですが、若い頃はいろんなバンドで演奏していました。ネブラスカ州の音楽シーンでは、みんなお互いを支えあっている感じなんです。「あのバンドの彼なら、ドラムセットを貸してくれるよ」、「あの人だったらアンプを貸してくれるよ」とか、機材を貸し借りするのが普通でした。みんなで費用を出しあって倉庫や地下室でライブをしたりもしましたね。


そんな中で、僕は4トラックで収録できるレコーダーを持っていたので、友達のために録音したりしながら、音楽活動をしていました。15歳の頃からずっとそんな感じでやってきたので、音楽はとても大切なもので、例えるなら「教会」のようなものですね。



『ディナー・イン・アメリカ』© 2020 Dinner in America, LLC. All Rights Reserved


Q:監督のミュージシャンとしてのリアルな体験や思いが、本作にとても色濃く反映されていると感じました。


レーマイヤー:主人公のバンドマン・サイモンは、100%ではありませんが僕のパーソナルな要素を色濃く反映しています。そんなキャラクターを通じて表現したかったのは、「作曲をしてレコーディングをする作業って、こういう感じなんだ!」ということです。15歳の頃からずっと家でレコーディングをしてきたので、作曲して収録することは僕自身の大切な自己表現のひとつだし、それをやっているとアイデアが泉のように湧き出してくる。だからすごくエキサイティングなんです。この映画では「その経験は、こういう感じなんだよ!」ということを表現しているつもりです。


だからサイモンとパティが2人で作曲し、レコーディングするシーンが、映画の中で一番好きなシーンなんです。実際に自分が友達や誰かとコラボして作業して行く時の喜びって、ああいう感じだと思います。その感覚をリアルにするため、劇中でパティが歌う曲は、パティを演じたエミリー・スケッグスと私の2人で作りました。




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