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『ディナー・イン・アメリカ』アダム・レーマイヤー監督 畑に種を撒き、作物を育てるかのごとき映画作りとは【Director’s Interview Vol.144】
畑で作物を育てるような独特の創作術
Q:本作は2006年から脚本を書き始めたそうですが、長い時間をかけて、どのようにストーリーができあがっていったのでしょうか。
レーマイヤー:それについてはまず、僕の作品作りのアプローチについて説明させてください。(部屋の壁を見せながら)僕は色々な企画のアイデアを付箋に書き込み、こうしてベタベタと壁に貼り付けているんです。今は54くらいの企画がありますね(笑)。
僕は作品作りを畑仕事だと考えています。まず種撒きをして水をやり、刈り込みができるまで育てていく。だからとても時間がかかります。この壁に貼ってあるアイデアはどれも5年以上前に考えついたもので、収穫の時期もそれぞれなんです。
アイデアごとに成熟期間が違い、「さあ、そろそろ収穫しようか」という時期に至るまでのプロセスが面白いので、どうしても時間がかかってしまうんです。ここに貼り付けてあるアイデアは、まだ熟すのを待っている感じです。それが僕の創作スタイルで、要は直線的に直ぐにできてしまうものに、あまり興味が持てないんです。・・・今話していて気付いたのですが、僕にとって、作曲という作業は即興的にすぐにできてしまうんですが、映画監督としての仕事はなぜか何年もかかってしまうんです。どうやら自分にはそういう傾向があるみたいです。
キャラクターを創造したりとか、キャラクター同士の関係を考えたりといったことには、何年もかかってしまう。歌はすぐ作ってしまうんですけどね。
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Q:編集スタイルがとても印象的でした、会話シーンの独特の速いカッティングや、ストーリーの緩急もはっきりしています。
レーマイヤー: もちろん、とてもこだわって編集しています。ファーストカットからラストカットまで、全てをコントロールしたいと思い、編集も僕自身が全て手掛けました。
映画の編集は、色んなタイプの曲を自分の好みでカセットに詰め込むミックステープのようなものだと思っています。そんなテープを作る時は、ここで気持ちを盛り上げて、この曲では少し落ち着かせて、という波のような動きを意識します。一つの有機体が波打つようなイメージです。あと僕の場合、映画作りもミュージシャンが楽曲を作っていくような感覚で作っているんです。例えば作品の中で句読点を散りばめるとするなら、「このポイントでは観客の感情をこの方向に誘おう」とか、「ここで次の展開につながる前置きやお膳立てをしておく」とか。
そうしたことも含めて、何年もかけて脚本を書き上げ、編集やサウンドデザインにもこだわり、熟成させながら作り上げていった作品なんです。そういったスタイルが効果的に作用したおかげで、完成して2年経った今も、様々な映画祭に招待される作品になったのだと思います。
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監督・脚本・編集:アダム・レーマイヤー
撮影監督、編集、ドキュメンタリーカメラマンとして 10 年間ハリウッドで下積み時代を経て、衝撃的なデビュー作『バニーゲーム』(10)で監督・脚本デビューを果たした。過激な内容で物議を醸し、PollyGrind 映画祭で撮影賞、編集賞などを受賞し、40 以上の映画祭で上映され話題となった。現在デイヴィッド・ランカスターのランブル・フィルムズと共に「HEARTLAND」というミニシリーズを企画しており、それ以外にも「Elegy for an American Dream」というドキュメンタリーに取り掛かっている。
取材・文: 稲垣哲也
TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)。
『ディナー・イン・アメリカ』
9月24日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国順次公開!
配給:ハーク 配給協力:EACH TIME
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