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『護られなかった者たちへ』瀬々敬久監督、映画と時代の相克の狭間で【Director’s Interview Vol.145】

『護られなかった者たちへ』瀬々敬久監督、映画と時代の相克の狭間で【Director’s Interview Vol.145】

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ドキュメンタリー映画の経験を経て、設定を変更



Q:利根、けいさん、小学生の出会いのシーンは、後々のストーリーにもつながる、非常に重要な場面です。「避難所で出会う」という変更が、とても効いていますね。


瀬々:そうしようと決めたきっかけは、藤川佳三監督の『石巻市立湊小学校避難所』(12)というドキュメンタリー映画です。彼は『ヘヴンズ ストーリー』(10)の制作部でした。ちょうどアップリンクで上映したときに震災が起こったんですよね。


その後すぐ、2011年の4月くらいに藤川監督は石巻に行って、住み込みで撮影を行っていました。そして、8月くらいに「旧北上川で行われる石巻川開き祭り花火大会を撮りたいから、手伝いに来てほしい」と言われていったのですが、その時の経験が大きいですね。


『石巻市立湊小学校避難所』のなかで、70歳くらいのお婆さんと小学生の女の子が避難所生活の中で仲良くなるという過程が描かれているんです。その後、お婆さんは仮設住宅に当選して避難所を出ていくのですが、こういった状況・環境でも出会いと別れがあるんだなというのが、すごく印象深かったんですよね。



『護られなかった者たちへ』©2021 映画「護られなかった者たちへ」製作委員会


Q:まさに、『護られなかった者たちへ』と通じるエピソードですね。本作に流れるリアリティの起因がわかりました。


瀬々:「震災」を扱うと悲惨なことばかりしか分からないと思うけど、実は人間的な生活もすごくあったんだ、ということが伝わってきたんですよね。そのときの経験が、「利根・けいさん・小学生が避難所で出会う」に繋がっていったんです。自分が実際に見聞きした人々の姿を投影している部分はありますね。


Q:筒井竜平プロデューサーが発見したドキュメンタリー番組の中で描かれた「震災の夜は星空が美しかった」というエピソードも、反映されたそうですね。


瀬々:ドキュメンタリーもそうですし、実際に皆さんの「満天の星空が綺麗だった」という証言があるんです。携帯電話で撮影した動画も観ました。ものすごく悲惨なことが起こった日の夜に、星空が綺麗だったということも、印象に残っていますね。


コロナ禍における外出自粛期間中にも、人が外に出なくなって空が綺麗になった、といった話がありましたよね。ショーン・ペンもオムニバス映画『11'09''01/セプテンバー11』(02)の中で、貿易センタービルが壊されたことで日当たりが良くなったというアパートの老夫婦を描いていましたし、何事も一面だけで見てはいけないんだなと思います。




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