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『護られなかった者たちへ』瀬々敬久監督、映画と時代の相克の狭間で【Director’s Interview Vol.145】

『護られなかった者たちへ』瀬々敬久監督、映画と時代の相克の狭間で【Director’s Interview Vol.145】

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コロナ禍による撮影延期がもたらした苦悩と効能



Q:作品を拝見していても、今回は限界突破といいますか、皆さんの覚悟を含めてかなりハードな現場だったのではないかと推察しました。


瀬々:元々は2020年の4月にクランクイン予定でしたが、緊急事態宣言の発出によって延期になってしまったんです。皆さんのスケジュールが上手くハマって6月から再開できましたが、色々な仕切り直しは当然ありました。脚本を少し短くしなければならなくなり、1度衣装合わせを済ませた役者さんに「ごめんなさい、役がなくなってしまいました」とお詫びをしたり……。撮影期間を延ばしたぶん、その間のギャランティも保証して払わなければならないし、現地では資材を集めていますから、その置き場所のお金も発生する。そういった中でやりくりしたので、撮影に入る前からとにかく大変でした。


また、このタイミングで撮影を再開している組がほとんどなかったので、「コロナ禍での撮影」という初めての試みが絡んでくる。暗中模索、五里霧中の中での撮影でしたね。ただ、多くの人の協力もあってちゃんと形にできましたし、「災い転じて福となす」なこともありました。その一つが、天気です。



『護られなかった者たちへ』©2021 映画「護られなかった者たちへ」製作委員会


Q:あぁ、なるほど。時期がズレたことで……。


瀬々:そう、ずっと雨続きでどんよりした空気感が自然と生まれて(笑)。ただこの、湿気が絶えざる感じが映画に良い影響を与えてくれました。


先ほどお話に上がった歩道橋のシーンも、雨が降っていますよね。 普段だったら雨の中でああいったシーンは撮影しないのですが、撮影も後半でスケジュール的にやるしかない。ただその結果、良い効果を生み出しているようには思います。


Q:おっしゃる通り、あの雨は強く印象に残りました。ある種、偶発的なものだったのですね。


瀬々:そうなんです。あとは、危機感みたいなものがスタッフ・キャストに良い緊張感を生みました。いまお話したような部分もそうだし、実際に震災が起こった場所で撮るということは、やっぱり精神にも影響を与えます。現地の方はどう思うだろう、ちゃんと撮らなければと気を遣いますし、俳優さんたちに与える、その土地ならではの雰囲気はすさまじかったですね。




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