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『コレクティブ 国家の嘘』アレクサンダー・ナナウ監督 国家の不正を暴く「瞬間」を捉えた衝撃のドキュメンタリーはいかにして生み出されたのか 【Director’s Interview Vol.147】

©Alexander Nanau Production, HBO Europe, Samsa Film 2019

『コレクティブ 国家の嘘』アレクサンダー・ナナウ監督 国家の不正を暴く「瞬間」を捉えた衝撃のドキュメンタリーはいかにして生み出されたのか 【Director’s Interview Vol.147】

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何かのために戦う人を描き、理解したい



Q:意外だったのは、あれだけの腐敗が報道されても、その直後の選挙では若者の投票率が低かったことです。日本にも似た状況があるのですが、ルーマニアでも若い世代の投票率の低さ、政治への無関心が問題となっているのでしょうか。


ナナウ:本作は主に2016年の出来事を描いていますが、当時はロシアがアメリカの大統領選挙に干渉したと報じられたりして、世界的に政治への失望感が広がっていました。そうした状況もあり、投票率が低かったのではないかと思います。選挙に行っても何も変わらないし、どうせまた同じ政治家が権力の座に就くんだろうと。


でもその後、状況は変わりつつあります。ルーマニアではパンデミックの中でも選挙がありましたが、その時は若い人も投票に行くようになり、中高年より若い世代の投票率の方が高かったんです。ゆっくりと変化は起こっています。



『コレクティブ 国家の嘘』©Alexander Nanau Production, HBO Europe, Samsa Film 2019


Q:本作を見た多くの観客は、選挙で投票することの大切さを痛感すると思います。監督をドキュメンタリーの制作に駆り立てるモチベーションはやはり、「社会を良くしたい」という思いなのでしょうか。


ナナウ:正直、そういった思いが自分を突き動かしているかどうかは分かりません。ただ私は、何かのために戦う人、あるいは社会を変えようという動機を持つ人を理解したいと思っています。


私はもともと移民で、二つの社会の狭間に置かれていた時期が長かったんです。だから、国家に帰属することや、何かのために戦うことが、どういう意味を持つのか理解したいという思いが強く、それに突き動かされてきました。


そんな私の作った映画が、観客にとって「なぜ人は不正と戦わなければならないのか」ということを理解することにつながったので、結果的に良かったと思っています。



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監督:アレクサンダー・ナナウ

1979年、ルーマニア生まれのドイツ系ルーマニア人の映画監督。ベルリン映画テレビアカデミー(DFFB)で演出を学ぶ。ドキュメンタリー映画『THE WORLD ACCORDING TO ION B(原題)』(09)で、2010年に国際エミー賞を受賞。長編ドキュメンタリー映画『トトとふたりの姉』(14)は、2015年欧州アカデミー賞にノミネートされる。同作は広く国際的に配給され、世界中の映画祭で上映された。フランス・ドイツ合作のソニア・クロンルンド監督のドキュメンタリー映画『NOTHINGWOOD(原題)』(17)で撮影監督を務める。同作はカンヌ国際映画祭2017の監督週間でプレミア上映された。最新の長編ドキュメンタリー『コレクティブ 国家の嘘』は、ヴェネツィア国際映画祭2019のオフィシャルセレクション(アウト・オブ・コンペティション)でプレミア上映され、ルーマニア映画として初めてのアカデミー賞ノミネートをもたらした。サムサ・フィルム(ルクセンブルク)とHBOヨーロッパとの共同制作作品。



取材・文:稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)。




『コレクティブ 国家の嘘』

10/2(土)シアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

配給:トランスフォーマー

©Alexander Nanau Production, HBO Europe, Samsa Film 2019

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