『G.I.ジョー：漆黒のスネークアイズ』谷垣健治アクション監督　87イレブンからの推薦でハリウッド大作へ【Director’s Interview Vol.154】

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2021.10.23香田史生

まるでジャズセッションだったイコ・ウワイスとのアクション

Q：剣戟アクションはさすがの迫力でしたが、そんな中でも平岳大さんの剣戟はどっしりとした「静」の存在感があって非常に印象的でした。

谷垣：平さんの佇まいや刀を返すときのちょっとした仕草を、ロバート監督がすごく気に入っていました。ロバートが好きな三隅研次の映画に出てくる役者のような、欧米人には出せない独特なものを感じたんでしょう。そういうものを大事にして、平さん演じる鷹村を作っていったんだと思います。

Q：ハードマスターことイコ・ウワイスも圧倒的存在感で、まったく負ける気がしないオーラが漂っていましたが、彼との仕事はいかがでしたか。

谷垣：イコとは以前にも何度か仕事の話があったのですが、スケジュールが合わなかったりして実現には至っていませんでした。だから今回は一緒に仕事ができて楽しかったですね。彼は主演もするし、プロデュースやアクション監督もする人なので、今回も自分でアクション監督をやりたかったと思うけど、僕らに身を委ねてくれました。

アクションについては、ベースだけは僕らの方で作ってあとはイコに任せました。「変えたい所があったら自由に変えてね」と。イコも日本のスタントマンたちと一緒に動きながら微調整していきました。お互いにアクションをやっているからこそ分かる微妙なニュアンスで、やりとりができた感じですね。例えて言うと、ジャズセッションみたいな感じでしょうか、即興でやりとりしながら一緒にアクションを作れたのが楽しかったです。

今回の役では脇に回っていたこともあって、彼の本来の凄さはそれほど活かせてないかもしれないけれど、でもやっぱり一緒に仕事ができたのはすごく良かったです。

Q：『るろうに剣心』をはじめ、『ザ・ファブル』『孤狼の血 LEVEL2』『ベイビーわるきゅーれ』など、日本映画界アクションの勢いを強く感じます。そして谷垣さんがハリウッド大作でアクション監督を務めている。この大きな動きをどう感じていますか。

谷垣：うーん、面白いアクション映画が増えているということもあると思いますが、もう一つ言うと昔たまにあった「むちゃくちゃヒドいアクション映画」っていうのがなくなったっていうのもあるかも（笑）。

それと今あがった映画というのはアクション監督こそそれぞれ違う人なんですが、その現場を支えてるスタントマンがほぼ同じ面子なんですよね。彼らがいないとアクション映画は成立しない。そこに構造的な問題があって、それが解決されない限りは一時的に勢いがあるように見えても、それでは一過性のものになってしまうと思います。

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アクション監督・セカンドユニットディレクター：谷垣健治

1970年生まれ、奈良県出身。単身香港へ渡り、香港スタントマン協会のメンバーとなる。スタントマン、アクション監督として活躍し、2018年台湾の金馬奨で『邪不圧正』（監督：チアン・ウェン）が最優秀アクション監督賞を受賞。2019年にはDGA（全米監督協会）のメンバーになる。近作として、『るろうに剣心最終章 The Final/The beginning』（21）、『Raging Fire』（21）、監督をつとめた『燃えよデブゴン／TOKYO MISSION』（21）などがある。

取材・文：香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ　魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。