2021.09.07
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』あらすじ
アメリカ・サンフランシスコで平凡なホテルマンとして暮らすシャン・チー。彼には、かつて父が率いる犯罪組織で最強の武術を身に付け、組織の後継者になる運命から逃げ出した秘密の過去があった。しかし、悪に染まった父が伝説の腕輪《テン・リングス》を操り世界を脅かす時、彼は宿命の敵となった父に立ち向かうことができるのか?
Index
- アジア発の新ヒーロー、MCUの新機軸
- より速く、より美しく、より楽しいアクションのために
- 『ブラックパンサー』のノウハウを応用、アジア文化をスクリーンに刻む
- ステレオタイプの克服、シャン・チーの「原点回帰」
- ジャンルの混合、そしてMCUの「原点回帰」
アジア発の新ヒーロー、MCUの新機軸
2008年、『アイアンマン』で始まったマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の物語は、長い旅路を経て、いよいよ新たな局面に突入する。新たなヒーローの誕生を描いた『シャン・チー/テン・リングスの伝説』をもって、MCUは大きな一歩を踏み出したのだ。
『アイアンマン』に始まったMCUの「インフィニティ・サーガ」は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)をもって幕を閉じた。その後、コロナ禍によるスケジュールの変更がありながらも、MCUは“新章”の開幕を準備してきたのである。『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19)は『エンドゲーム』直後の物語、フェーズ4の映画第1作『ブラック・ウィドウ』(21)は前日譚であり、どちらも物語を劇的に前進させることはしなかった。ディズニープラスで配信中のドラマシリーズ「ワンダヴィジョン」「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」「ロキ」も、大雑把に言えばこれら2作品と似た位置づけだ。「ロキ」ではマルチバースという新設定こそ導入しているが、いずれの作品も、物語の新たな局面を切り開くというよりは、むしろ『エンドゲーム』以後の問題を描く、あるいは『エンドゲーム』で生じた謎に応える形で展開してきた。
その中にあって、『シャン・チー』は「とにかく新しいことを」という気概に満ちた一作だ。MCUのお約束である作品同士のリンクをなるべく抑え、独立した世界観を描くこと、それによってユニバースを拡張することに力を尽くす。かくして、MCUに新風を吹き込む、〈マーベル流・中華武侠ファンタジー〉ともいうべき一作が誕生したのだ。では、この作品はいかに新しく、そしていかにMCUの――ひいては映画やポップカルチャーの――歴史を踏まえているのだろうか?
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』予告
アメリカ・サンフランシスコでホテルマンとして働いているシャン・チー(シム・リウ)は、親友のケイティ(オークワフィナ)とともに、平凡ながら穏やかな日々を過ごしていた。しかしある日、父親のシュー・ウェンウー(トニー・レオン)によって送り込まれた刺客に命を狙われ、その能力と出自を明かすことになる。父のウェンウーは犯罪組織「テン・リングス」のリーダーであり、シャン・チーは幼い頃から暗殺者としての訓練を受けてきたのだ。とある出来事をきっかけに父のもとを去ったシャン・チーは、戦いを禁じ、自らの過去を封印。ところがシャン・チーに迫るウェンウーには、伝説の腕輪テン・リングスを利用した大きな企みがあった。
MCUに主役級の新ヒーローが登場するのは、映画・ドラマをあわせても『キャプテン・マーベル』(19)以来。コミックにシャン・チーが初登場したのは1973年のことなので、50年近く経っての実写化となる。まずは本作最大の魅力といってもいい、シャン・チーの肉体派アクションに注目してみよう。