コミックから飛び出したかのようなハマり役
そしてなんと言っても、キャストの顔と強く結びついたアイコニックなキャラクターたちである。メインとなるトビー・マグワイアのピーター・パーカー、ジェームズ・フランコのハリー・オズボーン、キルスティン・ダンストのメリー・ジェーン・ワトソン(MJ)はもちろんだが、前述のようにアルフレッド・モリーナのドクター・オクトパスことオットー・オクタビアスや、J・K・シモンズが好演したデイリー・ビューグルの鬼編集長J・ジョナ・ジェイムソンは、特にハマり役と言えるだろう。
前作におけるウィレム・デフォーのグリーン・ゴブリン(ノーマン・オズボーン)も強烈な印象を残したが、それに負けず劣らずドクター・オクトパスも素晴らしい悪役となった。オズボーン同様、オクタビアスもまた自身の核融合実験の失敗が元で怪人と化す(その実験中の事故により妻を失う)。本来は実験の補助のために使っていた4本の作業用アームを自在に操り、銀行を襲撃しては実験再開の資金を集めるのだが、その姿によりドクター・オクトパスと呼ばれるようになる。不気味にアームをくねらせるその姿と、ダニー・エルフマンの音楽との組み合わせがまた良い。
ナノワイヤーで小脳に接続された作業用アームは、制御を失った人工知能により意思を持ったかのように動き、オクタビアスはそれらを自身の子どもたちであるかのように扱うが、2度目の実験がまたしても失敗し、それによりニューヨークの街が危機に瀕していると気づいたとき、スパイダーマンとともに街を救うようアームたちに言い聞かせ、自分の中で目覚めつつあった狂気に対し強い意思で打ち勝って見せる。実験で生まれた小型の太陽の膨張を、アームを駆使して阻止し、それとともに川に沈んでいく最期は、狡猾な敵のまま死んだグリーン・ゴブリンとは一線を画すものとなった。「化け物としては死ねない」というセリフも忘れられない。
J・ジョナ・ジェイムソンについては説明不要と言ってもいいだろう。角ばった輪郭に角刈り頭、口髭の下でくわえた葉巻がトレードマークで、拳でデスクを叩いては大声で捲し立てる鬼編集長。ピーター・パーカーの雇い主(というより撮った写真の買い手)で、スパイダーマンをほとんど偏執的に毛嫌いするが、それでも憎めないキャラクターで、ライミ版では三部作を通してJ・K・シモンズが好演、というより怪演している。ライミ版の遺産のひとつでもあるから、彼がMCUスパイダーマン作品に真っ先に輸入されたのも頷ける。ピーターがゴミ捨て場に置いていったスパイダーマンスーツ(後述)をホームレスを介して手に入れた際に、こっそり着てポーズを取ったりしてご満悦になるシーンは最高だし、スパイダーマンが廃業したと知って意気消沈する姿には、このキャラクターが憎めない理由が集約されている。結局彼もスパイディの大ファンなのである。
ついでに書いておくと、ピーターが暮らすアパートの大家ディコヴィッチの娘ウルスラもお気に入りだ。『2』で初登場し、端役ながら『3』にも続投する印象的なキャラクター(個人的にはエリザベス・バンクス扮するベティ・ブラントと並ぶ)。ピーターのことが好きらしいのだが、『3』で「調子に乗った」ピーターにさえも健気に想いを寄せ続けるような良い子である。