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『ほんとうのピノッキオ』マッテオ・ガローネ監督 100年以上前の物語でも失わない現代性【Director’s Interview Vol.161】
現代性を失わない「ピノッキオ」の物語
Q:「ピノッキオ」の物語を特にアレンジすることもなく、童話をそのままストレートに映像化している印象を受けました。それでも見事に映画として成立していましたが、脚本執筆の段階で気をつけていたことがあれば教えてください。
ガローネ:原作である「ピノッキオの冒険」は約140年前に書かれたものですが、内容がとてもモダンで現代にも通じるものだったので、設定などを変える必要性を感じなかったんです。この話で扱っているのは、人間の持つ矛盾や葛藤についてであり、今の人たちが抱える問題と同じようなことが語られています。このまま原作に忠実にやるべきだと思いましたね。この物語はイタリア文学の代表作の一つであり、現代性を失うことはありません。今でも私たちの心に語りかけ、私たちを取り囲む世界の危険や暴力について考えさせてくれます。また、自分にとって大切な人たちへの愛情がどんなに重要かも教えてくれるんです。
今回の映画化にあたり色んなリサーチを行いましたが、私は原作者のコッローディと同じイタリア人なので、自分のルーツを辿るようでとても興味深い作業でした。時代の変化を感じつつも、同時に同じようなものを持っていることにも気づきましたね。
『ほんとうのピノッキオ』copyright 2019 ©ARCHIMEDE SRL - LE PACTE SAS
Q:おっしゃる通り、童話としての教訓が21世紀の現代社会においてもこんなにも響くものだったことに驚きました。監督はこれまで、現代劇/ファンタジーと全然違う作風の作品を手掛けられていますが、それらが持つ映画における寓話性をどのように捉えていますか?
ガローネ:まさに、現代を舞台にした私の映画でも寓話的・童話的なものはありますし、逆に幻想的な作品でもそこにリアリズムというものは潜んでいると思います。これらに共通する、人間の持つ様々な葛藤や欲望、そういったものを私は語っていきたいんです。
例えば私が以前監督した『ゴモラ』(08)では、犯罪に魅了された若い子たちが出てきて、彼らの間違った選択とその結果を描いていますが、それは結局ピノッキオの話と同じで、ピノッキオが楽しいことだけを追求して、結果的にロバになってしまうことと変わらないのです。