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『ホドロフスキーのDUNE』の伝説【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.63】

『ホドロフスキーのDUNE』の伝説【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.63】

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クリエイターたちの古巣として





 とは言え個人的にもっとも気になるのは本企画のために作られたアートワークの数々であり、ホドロフスキーのもとに集ったクリエイターたち、もとい戦士たちである。特にフランスの伝説的バンドデシネ作家メビウス(ジャン・ジロー)は絵コンテやキャラクターの設定画などで構想の視覚化で大きな役割を果たし、ホドロフスキーのカメラとなってそのイメージを形にしていった。


 ドキュメンタリーの中でもアニメーション効果をつけられて登場するメビウスの絵コンテは、もはや絵コンテというより数秒おきのシーンを描いたグラフィックノベルのようだ。宇宙の闇から最初は光の点に過ぎなかった銀河へと迫っていき、途中で大破した宇宙船や小惑星群などを通過していくワンカットの冒頭シーンだけでも楽しく、今ではよく見かけるようなそんな映像がまだなかった頃、すでにその視点を持っていたことに驚かされる。


 サルバドール・ダリやオーソン・ウェルズなどの、ほとんど歴史上の人物のような面々の出演が計画されていたことは有名で、本作でも大きく紹介しているところだが、メビウスの描いたキャラクターデザインはキャスティングにひけを取らない壮麗さである。ダリが演じるはずだった(出演料1分間で10万ドル!)銀河皇帝は特にすごい迫力だが、どのキャラクターと衣装も、惜しみなく色が使われていて美しい。色数を増やすことを全く恐れないところに力を感じるし、キャッチーさとは一見無縁な装飾や造形でありながら、かっこよくおもしろいところに惹かれる。


 色と言えば、宇宙船のデザイナーとして呼ばれたイラストレーター、クリス・フォスの絵も大好きだ。『2001年宇宙の旅』のリアルさや『スター・ウォーズ』の汚れのある工業的なメカニックとはまた違う系統の、有機的なフォルムと極彩色の宇宙船は、宇宙空間を泳ぐ熱帯魚のようだ。色数が多くても調和の取れた絵というのは憧れる。フォスはのちに『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の宇宙船デザインにも参加しており、主人公スターロードが乗るミラノ号をはじめとする熱帯魚や南国の鳥を思わせる色とりどりで有機的な宇宙船にはフォスらしさが見て取れる。


 スイスのアーティスト、H・R・ギーガーもまたホドロフスキーに集められたひとりである。のちに『エイリアン』で悪夢的な生き物を生むことになるギーガーは、惑星アラキスを巡って主役サイドのアトレイデス家と対立するハルコンネン家に関するデザインを残している。肥満体のハルコンネン男爵自身の姿を模した城は、ハルコンネンの邪悪さを原作よりも倍増させている。


 『エイリアン』の脚本を手掛けることになるダン・オバノンも、たまたまハリウッドの映画館でオバノンとジョン・カーペンターの『ダークスター』を観たホドロフスキーによって見出された。オバノンは特殊効果担当となるはずだったが、『デューン』を通して彼と出会ったからこそ、ギーガーやメビウスは『エイリアン』のデザインに参加することになるので、エイリアンの卵は砂の惑星の中で密かに育っていたと言えるだろう。この連載でも以前紹介したデザイナーのロン・コッブも、『ダークスター』から『デューン』に参加しており、惑星アラキスを飛び回るソプター(昆虫のような羽で飛ぶ乗り物)などのスケッチを描いているが、もちろん彼も『エイリアン』のデザインで重要な役割を果たしていく。


 映画そのものは幻となったが、『デューン』組のクリエイターたちの才能は別の作品を生み出し、『デューン』の遺伝子は確実に今日まで残っているのである。




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