MONDO GROSSO「ラビリンス」のミュージックビデオを観たときに驚いたのは、そのビジュアルクオリティはもちろん、手掛けたのが日本人ディレクターだということ。そのクオリティの高さから、完全に海外のディレクターが撮った作品だと思い込んでしまっていた。
「ラビリンス」ミュージックビデオ
その日本人ディレクターこそ、映画『スパゲティコード・ラブ』を手掛けた丸山健志監督だ。映画は、さすがのビジュアルクオリティで彩られているが、決してそれだけに止まることはなく、登場する13人の若者たちの日常が、まるでリアルな息遣いが聞こえてくるかのように描かれていく。群像劇としても出色の仕上がりで、計算し尽くされたその構成は、映画の最後まで観る者を離さない。初長編作とは思えない本作を丸山監督はどう手掛けたのか? 話を伺った。
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日常をもがく人を撮りたい
Q:今回はどういった経緯でこの映画を手掛けることになったのでしょうか?
丸山:映画を作りたいという思いから、自分で企画を立ち上げたのがはじまりです。完全にゼロの状態からのスタートでした。今はCM/MVのディレクターとして仕事をしていますが、元々は学生時代に自主映画を作っていて、PFFで賞を獲ったのがこの仕事に就くきっかけだったんです。それから今までずっと映画はやりたかったのですが、CM/MVの仕事が忙しくて、特に「ラビリンス」を撮って以降はそれに輪をかけて忙しくなっていました。それでもまだ映画をやりたい気持ちは持ち続けていたので、仕事を始めてから15年ほど経ったのを機に、映画作りに踏み出しました。
Q:企画を始めてから完成までに、どのくらいの時間がかかりましたか?
丸山:制作自体は2〜3年ですが、構想は7〜8年くらい前から持っていました。ありふれた日常の中で、もがきながらも必死で生きている人を描く映画が好きで、「プロフェッショナル 仕事の流儀」や「ザ・ノンフィクション」などのドキュメンタリーもよく観るんです。そんな作品を観ると、明日への糧になるような気がしていました。それで僕も、そういう日常をもがいている人を題材に撮ることで、誰かのためになるような映画を作れないかなと、そう思ったんです。
『スパゲティコード・ラブ』©『スパゲティコード・ラブ』製作委員会
Q:ご自身で企画を立ち上げたからには、出資先も自分で見つける必要がありますよね。
丸山:そうですね。お金を集めるのは大変でした。当初の脚本は結構なお金がかかりそうな内容だったので、途中で脚本に手を入れて分量を減らしたりもしました。名もない監督の映画に出資をしてくれる人はそうそういなかったのですが、友人の紹介で何とか一社見つかって、それがきっかけでやっと製作にGOが出た感じでした。
Q:丸山監督は「ラビリンス」をはじめ、ハイクオリティなCM/MVを手掛けているので、出資先はすぐに決まりそうなイメージがありました。
丸山:僕はディレクターといっても、商業映画の実績はなかったですから。やはり原作やキャストの知名度など、ある種の保険みたいなものがないと、映画というコンテンツで出資してくれる人はいない。今回それを痛感しました。