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Netflixシリーズ『新聞記者』藤井道人監督が語る時代と世代。カギは“自分事化” 【Director’s Interview Vol.173】

Netflixシリーズ『新聞記者』藤井道人監督が語る時代と世代。カギは“自分事化” 【Director’s Interview Vol.173】

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動の『アバランチ』、静の『新聞記者』



Q:本作を拝見して『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(17)に通じる部分を感じたのですが、いま国内では『新聞記者』のような作品は希少で、それこそ『アバランチ』くらいではないかと思います。市民を軸に社会を描く作品だと、藤井監督はどういったものがお好きですか?


藤井:やっぱり『ペーパー・ハウス』(17~)ですね。『アバランチ』は特に影響を受けていると思います。『新聞記者』と『アバランチ』はやっていること自体は似ていますが、アプローチは真逆。『アバランチ』は劇場型の作りで“動”で魅せていくもので、『新聞記者』は“静”です。


参考にしたものだと、『アバランチ』は即席だったので『ペーパー・ハウス』や『バッドガイズ 悪い奴ら』(14)、『ザ・ボーイズ』(19~)を勉強して臨みましたが、『新聞記者』は“精神と時の部屋”に籠って延々と書き上げていったので(笑)、ドキュメンタリーに近いかもしれません。強いて言うなら、『スリー・ビルボード』(17)でしょうか。


Q:いま挙げていただいた作品たちは「市民が社会を変えられる」という共通項がありますね。今回の『新聞記者』にも、そんなポジティブなメッセージが入っていました。


藤井:そこは今回、特に意識しましたね。映画版が誰かから観たら手榴弾や火炎瓶のような作品だとしたら、ドラマ版は自分たちで掃除して花を植えるような思いで作っていました。



Netflixシリーズ「新聞記者」2022年1月13日(木)よりNetflixにて全世界同時独占配信


Q:「未来」という言葉も、象徴的に登場しますね。


藤井:プロデューサーの河村光庸と一緒にやるときには、絶対に欠かせないテーマです。河村自身が未来のことを僕らの世代にどう残せるかをすごく考えてくれている人で、それを受け継いだ僕らも考えなければならないと、いつも思っています。


Q:未来へのまなざしは、『新聞記者』もそうですし、『ヤクザと家族 The Family』『箱庭のレミング』『アバランチ』といった藤井監督の近作にも通じるように思います。


藤井:『箱庭のレミング』は最初、ライトなSNSホラーのような感じで作り始めて、その中で自分がいま、社会をどれだけ俯瞰して見られているんだろう?という部分にどんどん興味がわいてきました。自分たちの意志があるように見せかけて、実は特にないんじゃないか、といった“弄ばれている感じ”を、レミングというタイトルに引っ掛けて皮肉として用いました(※レミングは、ネズミの一種。数をコントロールするため、集団自殺をする伝説がある)


Q:なるほど。ただ、特に今年(2021年)に発表された作品だと、ディストピアの方向にいかないのが印象的でした。どこかに希望がちゃんとあるというか。


藤井:この2年が、コロナ禍というリアルディストピアだったからかもしれないですね。僕自身、暗い作品を観ると「なんでいまこれを見せるの?」とちょっと思っちゃいますし、果たして本当にいまの時代を生きている観客に届けるべきものなのか、は考えたところです。


やっぱり自分は、時代というものと共に映像を作っているので、つらいときには励ましたいし、みんなが楽しそうなときには継承したい。そういった思いはありますね。




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