社会派映画大国、韓国との違い
Q:先ほどの話と通じますが、欧米諸国や韓国だと、映画を用いた「自国の反省」という文脈があると思います。近年でも『モーリタニアン 黒塗りの記録』(21)や『ザ・レポート』(19)、『タクシー運転手 約束は海を越えて』(17)等々、エンタメの文脈に落とし込んでいる。ただやっぱり、日本ではまだ少ないですよね。
藤井:その理由はすごくわかります。そもそもプロデューサーたちがまず興味を持ってくれないんですよね。対して、韓国はそういった作品が非常に多い。『国家が破産する日』(18)や『工作 黒金星と呼ばれた男』(18)など、良質な社会派作品が多数ありますよね。それは、「自分たちが国を支えている、もしくは変えなきゃいけない」という意識が元々強いからだと感じます。
一方日本は、映画業界の人間でも「現場があるから」といった理由などで、選挙に参加しない/できない人も多いですし、そもそも興味がない人が僕の周りにもたくさんいます。そりゃあ社会派作品は生まれないよな……と単純に思いますね。自分自身も『新聞記者』をやってマイノリティだと受け取られる経験をしてきましたし、「日本でそういうことをやるとヤバいんじゃないか」という風潮になるのも、この国の特色だなと感じます。そこを突破したのは僕の力ではなく、河村のオフェンス力ですよね。河村がスターサンズを通して築いているイズムを、僕たちがしっかり受け継いでいかないといけない。
何もビビりまくって安定した作品を観客が観たいわけじゃないとは思いますし、エンターテインメントとしてどう表現するかは、一番大事にしたいところです。
Netflixシリーズ「新聞記者」2022年1月13日(木)よりNetflixにて全世界同時独占配信
Q:それが横浜流星さんや磯村勇斗さんといった、藤井監督の下の世代と共闘することで継承されていくのも素晴らしいことですね。
藤井:そうですね。作品を作ることで嫌な思いをする人間がいたらやっぱり良くないし、そういった部分を僕たちが慎重に考え抜いたうえで、俳優部が安心して演じられるという環境を、今後色々な監督たちと共闘して作っていければなと思います。
Q:インタビューをさせていただく中で、映画業界の若い世代の方々の国や政治に対する意識は、いま過渡期にあるように感じています。
藤井:僕の知り合いが「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」を制作しましたが、いままでだったらなかった動きだと思います。僕たち世代、若い世代が動きを起こさないといけないということが徐々に広がっているように感じますね。
「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」
Q:今回の『新聞記者』は、そういった意味で契機になる作品でもありますし、同時代性をまとったこのドラマが、Netflixで配信されるのは意義深いですね。
藤井:届くといいですね。Netflixへの信頼はすごくありますし、世界に届けて下さるというだけで本当に感謝しています。