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『名付けようのない踊り』田中泯×犬童一心監督インタビュー 「私のこども」をちゃんと持っている人が大人なんです【Director’s Interview Vol.178】

『名付けようのない踊り』田中泯×犬童一心監督インタビュー 「私のこども」をちゃんと持っている人が大人なんです【Director’s Interview Vol.178】

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「こども」をちゃんと持っている人



Q:泯さんは自分の子供時代を「私のこども」と呼び、そのエピソードが山村浩二さんのアニメを用いて描かれます。数あるエピソードの中から映画に出すものはどのように決められたのでしょうか。

 

犬童:泯さんの本の全てを網羅するよりも、何か一つをメインに取り上げたほうがいいなと思ったんです。それで本の中に出てきた「私のこども」を使ったんです。田中泯の踊りを見るきっかけにするには、とてもいい言葉だなと。


泯さんのように、自分の中に「こども」をちゃんと持っている人が大人だと思います。でも「こども」の部分を持ってないことが大人であると思い込んでる人たちがいて、僕はそういう人が嫌いなんです。例えば大人だから根回しができるとか、忖度ができるとか、いろんな判断ができるとか、それができるのが大人だと思い込んでいる。でも、わざとそうしないこともできるのが本当の大人だと思うんです。それは「こども」をちゃんと持っていればできることなんだけど、「大人はこうじゃなきゃいけない」って勝手にどんどん縛られていって、くだらない馬鹿な大人になっている人たちがいる。


田中:だんだん本音が出てきた(笑)。


犬童:僕はそういう人たちが嫌いだから、自分で作ったこの映画には「私のこども」をしっかり入れておこうと思ったんです。



『名付けようのない踊り』©2021「名付けようのない踊り」製作


田中:「私のこども」は、すごく大事なことだと思います。僕も「こども」を持ってない大人とは親しくなれないんです。


よく政治家は「子供たちの未来」なんて言うけれど、まずは自分の未来を考えた方がいいんじゃないかと思いますね。ものすごいスピードで時間は進んで行くから、「子供たちの未来」なんて言っても、その当の子供たちはとっくに大人になっちゃう。もしかすると、その政治家みたいな大人になっちゃっているかもしれない。自分の中の「こども」に対峙しない限りは、他人の未来をどうこう言うことはできないと思うんです。


自分自身が未来に向かって刻々と歩んで行くわけですから。自分が例題でしかないわけです。自分という人間を例題にあげて、それを自分で工夫して生かしてあげる。どこまでも広い個人なんです。もちろん、他人がどうでもいいということではないんです。むしろ他人という世界があるからこその例題なんです。




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