© ANNE FRANK FONDS BASEL, SWITZERLAND
『アンネ・フランクと旅する日記』アリ・フォルマン監督 映画を観た子供たちが動き出してくれたら…【Director’s Interview Vol.191】
アニメーション映画として初めてアカデミー賞(外国語映画賞)にノミネートされた『戦場でワルツを』(08)。その監督であるアリ・フォルマンが手掛けた最新作は『アンネ・フランクと旅する日記』。本作ではアンネが生み出した空想の友達キティーを現代に登場させ、新たな視点でアンネの物語を紡いでいく。取り入れられた現代の視点はアンネが生きたホロコーストの時代を再認識させ、現代を生きる我々が抱える問題をも浮き彫りにしていく。
「アンネ・フランクの物語」をなぜ今アニメーションで描いたのか? アリ・フォルマン監督に話を伺った。
Index
なぜアニメなのか?
Q:『戦場でワルツを』や本作など、「戦争」というテーマをアニメーションで描く理由を教えてください。
フォルマン:自分としては二作品とも戦争映画だとは思っていません。『戦場でワルツを』は「記憶にまつわる物語」、本作は「青春物語」で二人の少女が関係を深めていく話です。また、アニメーションを使うことで潜在意識や空想の世界なども描くことができる。アニメは、より複雑でレイヤーのある世界を描き出せる最適なツールだと思いますね。
『アンネ・フランクと旅する日記』© ANNE FRANK FONDS BASEL, SWITZERLAND
Q:『戦場でワルツを』に比べて本作は、キャラクターの描かれ方やファンタジーな要素など、子供が鑑賞しやすいように敷居を下げている印象があります。そこにはどんな意図があるのでしょうか。
フォルマン:ホロコーストの生存者は高齢化していて、当事者から直接話を聞くことが年々困難になっています。歴史としては語り継がれていくと思いますが、まるで聖書のように遠い世界の出来事になり全く共感できなくなるのではないか。そういう危惧がありました。ホロコーストを子供たちに伝えるために何が最適かを考えた時、アニメーションに行き着いたのです。ファンタジーの要素やキティーの存在も同じです。子供たちにとって魅力的に見せることで、歴史をしっかり伝える意図がありました。
Q:日本は第二次世界大戦中はナチスドイツと同盟を組んでいましたが、今の日本人にはその事実を知らない方も少なくない。日本でも歴史の風化は止まらなくなってきています。
フォルマン:歴史は感情とともに伝えられるべきだと思っています。繰り返し教えられて覚えさせられても全く心に入って来ません。新たな側面から物語を伝えて新鮮味を与えることも大切です。2018年にグラフィック版(マンガ版)の「アンネの日記」を作りましたが、そういった形で伝えることも必要ですよね。新しい形でどんどん語り継がれていくべきだと思いますね。