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『流浪の月』李相日監督 日々求められる数多の判断、最終的に頼るものとは【Director’s Interview Vol.206】

『流浪の月』李相日監督 日々求められる数多の判断、最終的に頼るものとは【Director’s Interview Vol.206】

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動物的で鋭い感覚を持つホン・ギョンピョ



Q:今回の撮影監督のホン・ギョンピョさんは、ポン・ジュノ監督に「激情型同士で合うのでは」とつないでもらったとのことですが、実際の現場ではどのようなことを話されて撮影を進められたのでしょうか?


李:まぁ「激情型」というよりも「温度が高い」くらいの言い回しだった気もしますが(笑)。今回はホンさんとの撮影準備期間がすごく短かったこともあり、現場で起こることや俳優が醸し出すものを逃すまいと、ホンさんはとても注意深くアンテナを張っていました。目の前で生まれるものに対してどこだったらカメラがその中に入れるか、その場所を徹底的に探していく。ただ画角に収めていく、という印象は全くありません。今回は画コンテが一切ない状態で始めたので、そのシーンの最初のカットを探すことに一番時間をかけて議論を重ねました。


また、例えば外でロケをしていて風が吹くとそれを確実に生かす。風が吹けば衣装もなびくし見え方も変わってくる。「風が吹くんだったら、ここで撮る」と言って、自然現象も含めて撮影位置を決めるんです。人物の後ろの木が揺れることを踏まえて「だからこのカットはこの位置なんだ!」と。まぁ風が収まったらカメラ位置が変わることもあるんですけどね(笑)。


演技はもちろんのこと、光と影、背景のうごめき全てをキャラクターの内面描写のために生かす。その感覚が非常に動物的で鋭い。それでいてとてつもない経験値に裏打ちされた圧倒的な技術力。何もかもに感嘆しきりでした。



『流浪の月』(c)2022「流浪の月」製作委員会


Q:李監督がこれまで手掛けられた他の作品では、事前に画コンテは描かれていたのでしょうか。


李:はい。ある程度は脳内でシュミレーションをして現場に臨んでいました。撮影前におおよその設計図を半分ぐらい固めて、残りは現場で芝居を作りながら構築していく感じでした。


Q:それが今回は全て現場で決めることになった。ということは、どのアングルでも撮影出来るように、準備はオールスタンバイになるということですね。


李:そうですね。それはもう、美術部、照明部、その他いろんな部署は本当に大変だったと思います。




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