Netflixが日本上陸して変わったものとは?
Q:プロデューサー同士がこれまで近くにいなかった、というお話が印象的でした。
道上:意外にないですね。しかも、この4人っていう規模感がすごく意見が言いやすい。皆さんのおかげで雰囲気もいいですし、すごく健全な場だと感じます。
瀬崎:僕がROBOTにいたときも、横で話すことはあまりなかったです。みんなそれぞれのプロジェクトで動いちゃってるし、基本的には個人事業主みたいな立ち回りだった。今の環境は、ものづくりにおいてすごく面白いです。
Q:皆さんのルーツが多様だからこそ、今お話しいただいたことはある種の国内の映像業界全体の課題にもかかってくるテーマのようにも感じます。
五箇:たとえば「世界を目指す」ということに関しても、いままでは映画にしてもドラマにしても具体的にどうしたら、世界中の人に観てもらえるのか、わからなかったと思うんです。そんな中2015年にNetflixが日本に上陸した。実際「「100万円の女たち」を配信したら、Netflixの方が「タイですごく観られているよ」みたいなことをおっしゃってくれて、これは…!と希望が見えてきました。プラットフォームが増えたということは、チャンスも増えているということですから。テレビ局と3大映画会社(東宝・東映・松竹)中心で制作・配給していた時代が変わりつつある。マーケットが広がってきているのは肌で感じますね。
これは映像産業だけじゃなくて、他のどの産業でもそうだと思うんです。国内はもうガチガチに産業構造が固まっちゃっているから、海外マーケットを目指していくという思考になるのは自然というか。
瀬崎:日本で作っているものが海外で観られるという状況になって、距離感がだいぶ近くなりましたよね。民放で作ったドラマが海外で流れることはまずないですし、映画においても、海外に向けて作っている人たちは昔からいるけど、まずは国内興行という流れがある。海外に出すといってもメインは賞レースで、その作品が国内の興行でうまくいっているというわけではない。
これは作り手もそうだと思いますが、たとえば「世界の人々が観たときにどう思うだろう」という感覚を持てるか。それがあるかどうかでまた変わってくると思うんです。日本の興行で回していく映画を作っていくときに、やっぱりそこはなかなかできていなかった。でもNetflixという海外のプラットフォームが日本にやってきて「我々も行けるかもしれない」という感覚になれた今、変わっていかなければとも感じます。
藤井さんは、最初にお会いしたときからその意識がすごく高かったですね。「日本というよりはアジア圏でやっていきたい」とおっしゃっていて新鮮でしたし、藤井さんより下の世代の方はよりそういった仕組みのなかでものを作っていくことをスムーズに受け入れていくと思います。