上がるクオリティ水準。国内でも生き残っていけない危機感
道上:対・海外の話だと、配信プラットフォームができたことで、様々な国の作品を見比べることができるようにもなりました。そうするとクオリティの差が露骨にわかってしまう。その結果、ランキング上位が韓国ドラマになっているのが現状だと思います。となると、そこのクオリティに達しないと国内でも勝負できなくなる。そこがないと、これからはもう生き残っていけない気がしますね。
瀬崎:「韓国ドラマ」というブランドができたことも本当に大きいですよね。
前田:そうそう。国としてシステムが出来上がっていますよね。1番はフランス、2番は韓国という感じだと思います。
道上:映画の場合で言うと、企画段階から配信プラットフォームがお金を出してくれたり、どんどん変わってきていますね。
Q:公開後にここの配信プラットフォームで配信するから、ということですよね。
前田:はい。そこから1~2本くらい「本当に面白い」と皆さんに言ってもらえるものを作れたら、「企画がいかに重要か」を訴えていきやすくなりますし、そういった成功例を提供していけば、周りは認めざるを得ない。そこは目指したいですね。
五箇:スタジオドラゴンがLINEと提携している*のは、完全に原作を作りに行っているってことですよね。(*2022年5月にCJENM、スタジオドラゴン、LINE Digital Frontierが提携し、合弁法人「スタジオドラゴンジャパン(仮)」の設立を発表)。日本だと出版社が滅茶苦茶強いから、何とかその牙城を切り崩そうと、韓国の成功例であるウェブトゥーンの手法をテック系を中心に各社が導入してオリジナルIPを作ろうと動きが過熱していますよね。
瀬崎:日本が誇るコンテンツであるアニメは、出版社を通さなくてもいい作り方ができている気がしますね。海外にも受け入れられているコンテンツだから受け入れられやすいという利点もあるでしょうし。
前田:逆手にとって、出版社と組んでコンテンツ作りからやるのも一つのやり方かもしれないですね。
1時間弱の取材時間の中で、激論を交わした4人。各々の「全然時間が足りなかったですね。もっと話したい」との言葉通り、この先もまだまだディスカッションを重ね、「映画産業の未来」についてのトライ&エラーを繰り返していくことだろう。BABEL LABELの新たなフェーズは、まだ始まったばかりだ。
前田浩子 Maeda Koko プロデューサー/キャスティングプロデューサー
映像企画・制作会社、株式会社アルケミー・プロダクションズ代表取締役、プロデューサー。大学在学中から語学力を活かし、マドンナ、ローリングストーンズ、マイケル・ジャクソンなどの外国人アーティストのコンサートツアー、及び音楽番組の制作に携わり、その後映画・TVドラマ・PV・CMに活動の場を移す。映画監督・岩井俊二と出会い、1996年に劇場用映画『スワロウテイル』で映画プロデューサー、デビュー。
【代表作品】
1996年『スワロウテイル』岩井俊二
2001年『リリイ・シュシュのすべて』岩井俊二
2004年『花とアリス』岩井俊二
2003年『2046』ウォン・カーウァイ
2004年『キル・ビル』クエンティン・タランティーノ
2008年『百万円と苦虫女』タナダユキ
2015年『星ガ丘ワンダーランド』柳沢翔
2019年『ヒキタさん!ご懐妊ですよ』細川徹
2020年『宇宙でいちばんあかるい屋根』藤井道人
五箇公貴 Goka kimitaka 企画プロデューサー
1975年東京北区王子生まれ。1998年、テレビ東京入社。以降、プロデューサーとして数多くのテレビドラマ・映画・バラエティ番組を制作。2020年3月テレビ東京を退社し、エンターテイメント会社、株式会社maroyakaを起業。
2022年から映像集団BABEL LABELにも企画プロデューサーとして参加。
【代表作品】
■テレビドラマ
ドラマ『サ道』シリ-ズ 『電影少女VIDEO GIRL』シリーズ 『100万円の女たち』
3DCGアニメーション『四月一日さん家の』シリーズ 『Dead Stock』『湯けむりスナイパー』など
■映画
『舟を編む』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』『LOVE!まさお君が行く』
『ゴッド・タンキス我慢選手権THE MOVIE』シリーズ他
製作委員会として『モテキ』『横道世之介』『ぱいかじ南海作戦』他
■その他
ドキュメンタリー『田原総一朗の遺言』シリーズバラエティ『やりすぎコージー』『ゴッド・タン』など
瀬崎秀人 Hideto Sezaki プロデューサー
1981年7月31日生まれ。2000年からフリーの制作部として多くの映像作品に参加。2017年、株式会社ROBOT入社。以降、プロデューサーとして映画・テレビドラマを制作。2022年からBABEL LABELに入社。
【代表作品】
2018年『会社は学校じゃねぇんだよ』ABEMA
2019年『スカム』MBS
2021年『すくってごらん』真壁幸紀
2022年『余命10年』藤井道人
道上巧矢 Takuya Michiue プロデューサー
1978年生。2000年に日本映画学校(現・日本映画大学)卒業。以降、制作部やラインプロデューサーとして映画を中心に数多くの作品に関わる。
【代表作品】
2012年 映画『BRAVE HEARTS 海猿』羽住英一郎監督
2013年 映画『永遠の0』山崎貴監督
2020年 映画『スパイの妻』黒澤清監督
2021年 映画『空白』吉田恵輔監督
2022年 NETFLIX『新聞記者』藤井道人監督
取材・文:SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema」
撮影:青木一成