1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『峠 最後のサムライ』監督:小泉堯史 × 撮影:上田正治 × 編集:阿賀英登 写すものをきちんと作る【Director’s Interview Vol.218】
『峠 最後のサムライ』監督:小泉堯史 × 撮影:上田正治 × 編集:阿賀英登 写すものをきちんと作る【Director’s Interview Vol.218】

『峠 最後のサムライ』画面向かって左から編集:阿賀英登、監督:小泉堯史、撮影:上田正治

『峠 最後のサムライ』監督:小泉堯史 × 撮影:上田正治 × 編集:阿賀英登 写すものをきちんと作る【Director’s Interview Vol.218】

PAGES


写すものをきちんと作るのは大前提



Q:ずらっと正座して並んだ侍たちが、ゆっくりと殿様に向かって礼をする。その動きの連鎖も美しいですが、動作を一連で見せる長いカットとなりますが、どのように指示されているのでしょうか?

 

小泉:もちろんリハーサルはしますが、細かいことはあまり言ってないですね。それでもきちんとああいう風になりますね。


Q:現場での小泉監督は役者さんへの演出に集中されていて、“画”や“撮影の場”を作ることついてはスタッフがやっているという感じなのでしょうか。


小泉:僕はもう「用意、スタート〜カット!」って言っているだけですからね。これは誰が言ってもいいんですけど(笑)。写すものをきちんと作るというのは大前提なんです。写すものがきちんとしてなければ、いくら技術が良くてもどうにもならない。それは美術もそうだし、俳優さんもそう。まずはそれを含めて写される対象を、芝居も含めてきちんと作ることです。上田さんだって畳の色なども含めて全部に気を配るわけで、それはスタッフ全員がそうだと思いますよ。背景の掛け軸にしても、衣装にしても、刀一本にしても、一つ一つが写されるものだし、僕らはそれら全部をスタッフや俳優さんに託すわけですから。だから皆そのための努力を準備段階からきちんとやっているということですね。


Q:「写すものをきちんと作る」に通じるかと思いますが、ロケハンには相当時間をかけたと聞きました。


小泉:そうですね。伝統や歴史というものは急にできるものではありませんから、そういった歴史を経た建物などを選ぶことが大事です。150年ほど前の人たちを演じてもらうわけですから、撮影場所は俳優さんの芝居にも影響してくる。また、撮影の点からも、ある程度の広さは必要になりますし、歪んだ画にならずに撮れるような場所を上田さんも選んでいると思います。



『峠 最後のサムライ』©2020「峠 最後のサムライ」製作委員会


Q:広角レンズなどを使って無理やり撮らないということですね。


小泉:狭いところを無理に広く見せようとすると、画は大体おかしくなります。うちの組ではそういうことはあまりないですね。


上田:広角レンズがダメってわけじゃないんです。まあそれは狙いによりますよね。『市民ケーン』(41 監督:オーソン・ウェルズ)なんかは広角で撮ってるんです。それはそういう狙いの映画だからね。普通の映画で広角で撮っても、そこだけが全体から浮いちゃったりするからね。


Q:役所さんと松たか子さんが座敷で踊るシーンがありますが、全身が映っていたのでスタジオセットでの撮影かと思いましたが、実際にある場所でのロケ撮影だと聞いて驚きました。


上田:あれは、外にやぐらを立てて周りを暗幕で囲って撮っているんです。日本の部屋はそんなに広くないんだから、襖を外して遠くから撮っています。別に遠くから撮るのが趣味なわけじゃないけどね(笑)。


Q:やぐらを立てて撮影するとなると大掛かりで時間もかかりますね。

 

上田:その撮影にはそれだけの時間が必要なのであって、時間がかかるというわけじゃないんです。それが普通なんですよ。時間がかかると考えてしまうようなら、映画なんて撮らない方がいいんですよ。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『峠 最後のサムライ』監督:小泉堯史 × 撮影:上田正治 × 編集:阿賀英登 写すものをきちんと作る【Director’s Interview Vol.218】