『ジュラシック・ワールド／新たなる支配者』コリン・トレボロウ監督　原点に戻ったテーマを自ら描きたかった【Director’s Interview Vol.225】

PAGES

2022.07.29斉藤博昭

『ジュラシック・パーク』で知った監督の役割

Q：そして今回は恐竜のキャラクターにも感動のシーンが用意されたりします。しかしそのあたりも押しつけがましくなく、冷静に演出されていますね。

トレボロウ：その点はバランスを考慮しています。恐竜だけでなく人間のキャラクターも、私はリアルな反応や感情を重視します。観客の感情を過剰に操りたいとは思いません。映画監督としては、物語や演出で観客の感情にどう接続できるかを重視します。もしあなたが感動したら、それはあなたの心にある何かとつながったから。それが人間であれ、恐竜であれ、画面の中のものと観ている自分の壁が取り払われるわけで、私はその作業が大好きなのです。

Q：その冷静さは、あなたの性格なのでしょうか？

トレボロウ：どうでしょうか。エモーショナルな映画も撮ってますからね（笑）。観客には映画をまっすぐに受け止める人もいれば、皮肉な視点で観る人もいます。「ジュラシック」シリーズの場合は、純粋に受け取る子供たちから、私たちのような懐疑的に何かを観る世代までアピールしなくてはならず、多くの視点を意識するので冷静な判断が求められるのかもしれません。

Q：『ジュラシック・ワールド』3作に関わり、作品として伝えたいことは、どう変化していきましたか？

トレボロウ：3作を通してずいぶん変わってきたと思います。1作目では、人間の金銭欲から生まれる最悪の事態を描きました。2作目では、動物を間違った環境に移動させることの危険性、彼らのいるべき場所にフォーカスしました。そして今回は、人間と自然界の共生です。私たち人間は、どのように自分たちの世界を破壊できるのか。他者への注意を怠り、敬意を払わなければ何が起こるのか。そのためのヒントを作品に散りばめ、最も重要なことを映画の最後に希望を込めて語ったつもりです。

Q：1作目の『ジュラシック・パーク』を観た時は10代だったと思いますが、今こうしてシリーズの監督を務めているのは、どんな気分ですか？

トレボロウ：当時から私は演技や音楽などに夢中な少年で、映画監督になる夢も抱いていました。ですから映画評論家のような頭でっかちの感覚で『ジュラシック・パーク』を観たところ、子供に戻った気分になり、逆の洗礼を受けた思い出があります。映画監督の究極の成功は、物語が語られていることを忘れさせ、キャラクターと一緒に冒険している気持ちに没頭させること。監督としての喜びや見返りは、もしかしたら自分の理想とは違うのかもしれない……。その事実を学びました。私の映画から子供たちがインスピレーションを受け取ってくれたら最高の幸せであり、そうしたサイクルがこれからも繰り返されていくのでしょう。

Q：では最後に、映画監督としての最大の喜びとは？

トレボロウ：脚本から撮影まで、多くの人との共同作業に喜びを感じます。私たち全員が感じていることを、監督として私はいかに効果的な方法で伝えられたのか？　完成した映画を世界中の人が観て、私たちの意図にどう反応するのかを確認した時に、深い満足感に浸るのです。

『ジュラシック・ワールド／新たなる支配者』を今すぐ予約する↓

監督・脚本：コリン・トレボロウ

取材・文：斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。