タングを存在させるために
Q:かまいたちのお二人もコメディリリーフをバッチリ担ってくれています。二人はアドリブゼロだったと聞いて驚きました。
三木:確かにセリフはちゃんと言ってもらいましたが、彼らなりのニュアンスでやっていただきました。ゆるい悪役感は、『ホーム・アローン』(90)や『グーニーズ』の悪役のイメージだったんですけど(笑)。
Q:確かにジョー・ペシ感はありました(笑)。
三木:ジョー・ペシ、いいですよね(笑)。
Q:タングのクオリティがすごく高いのはもちろんですが、二宮さんや満島さんをはじめタングの周囲にいるキャストの皆さんの演技があってこそ、タングの現実感が説得力あるものになっていました。
三木:本当にそうですね。二宮さんしかり満島さんのスイッチの入れ方なんかも、現場で鳥肌が立ちました。何もないところに話かけたり涙ぐんだりしてもらうのですが、いやぁこれは難しいなぁと(笑)。本当に芝居が達者な二宮さんと満島さんじゃないと、なかなかあそこまでいかないだろうなと現場で痛感しましたね。
『TANG タング』©2015DI ©2022映画「TANG」製作委員会
Q:キャストの皆さんもですが、監督として演出することも難しそうですね。
三木:そのためにプリウィズ(※)を作ってタングの動きを説明したり、なるべくキャストが迷わず状況を理解できるようにしていました。そういった意味ではいつもより細かく演出していたかもしれません。
(※)CGなどが完成した状態を想像できる事前のシミュレーション映像。
Q:仕上げ作業もCGや合成の関係から相当時間がかかるか思いますが、VFXを担当した白組とのお仕事はいかがでしたか?
三木:白組さんに素晴らしいCGを仕上げていただいたので、撮り終わってからも新しい動きを作っていくワクワク感がありました。現場でもなんとなくは想像していましたが、実際にCGがあがってくると「あ、こうなるんだ」っていう面白さがありましたね。全体の作業量としては撮影が3割くらいで、そのあとの仕上げ作業の方が7割くらいあった感覚でした。
Q:白組からあがってくるものに対しても、細かく指示を出されたのですか?
三木:そうですね。撮影だとスケジュールの都合上その場で撮り切らなければいけないのですが、それがCGだとある程度はやり直しがきくので、その初めての経験も面白かったです。
Q:CGを駆使している感じがあまりせず全体的にとても自然でしたが、撮影はロケが多かったのでしょうか。
三木:そうですね。スタジオグリーンバックは深センのナイトシーンぐらいですね。なるべくロケーションの空気感は入れたかったのですが、コロナ禍での撮影で地方ロケもなかなか難しかったです。でもそれで、ファンタジーの世界観の部分はCGで作っていこうと切り替えられました。本当だったら「やっぱり深セン行って撮ろうよ」となっていたかもしれませんが、違うアプローチができたのは逆に良かったですね。
Q:観ていてもどこかロケで合成かは分からず、むしろ深センのシーンはスケール感も感じました。
三木:スケール感はすごく意識しました。冒険ファンタジーって、行った先々のワクワク感が楽しいところなので、そこは観ているお客さんにも楽しんでもらいたかったんです。