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『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』ブレント・ウィルソン監督 多くの苦しみと悲しみを抱え、それでもなお生き続ける天才アーティストの姿を見て欲しい【Director’s Interview Vol.231】

Ⓒ2021TEXAS PET SOUNDS PRODUCTIONS, LLC

『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』ブレント・ウィルソン監督 多くの苦しみと悲しみを抱え、それでもなお生き続ける天才アーティストの姿を見て欲しい【Director’s Interview Vol.231】

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人間の弱さを撮る、すなわち強さを撮ること



Q:聞き役となったジェイソン・ファインとは、どんなことを話し合ったのですか?


ウィルソン:ジェイソンと私は誓いをかわしていた。それは、ブライアンが辛かったり、苦しかったり、悲しくなったりするような状況を作らないということだった。ちょっと偽善的な言い方だね(苦笑)。しかし、ブライアンは私が想像していた以上に心が広く、撮影隊を受け入れるようになっていった。これは嬉しい驚きだったね。


Q:本作でブライアンが最大限、自分をさらけ出していたのは、ビーチ・ボーイズの盟友であった今は亡き弟カール・ウィルソンの家の前で、車の中にこもっているシーンではないでしょうか?


ウィルソン:まさに、そうだ。個人的にも、ブライアンがカールの家の前で“ロング・プロミスド・ロード”を聴く場面にはハートを砕かれる。この映像が車中の固定カメラで撮られていたとき、僕は車外でジェイソンと話をしていたので、ブライアンが車の中であの曲を聴きながら泣いていたことをまったく知らなかった。この直後、僕とジェイソンとブライアンは一緒にランチに行ったけれど、そのときのブライアンはまったく取り乱していなかったので、私も気づかなかった。



『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』Ⓒ2021TEXAS PET SOUNDS PRODUCTIONS, LLC


Q:このエモーショナルなフッテージの存在に気付いたのはいつだったのでしょう?


ウィルソン:撮影が終わって数か月後、編集作業に取りかかったときだ。最初に、このフッテージを発見したとき、私は感情を激しく揺さぶられ、その日は編集作業ができなくなってしまった。できるのは家に帰ることだけだった。ブライアンの表情に、はっきりと悲しみが表われている。それを見ることが辛かった。この場面を映画に使うべきかどうか、ずいぶんと悩んだよ。


Q:それをあえて取り入れた理由は?


ウィルソン:観客が、ブライアンとともに歩けるような映画にしたかったからだ。ブライアンは今も心の状態が健康とは言い難い。日常的に、このような苦しみを経験している。それを観客に理解してもらうためには、このフッテージは必要だと判断した。もちろん、ブライアンも上機嫌のときもあるし、ダウンしているときもある。良い時間もあるし、よくない時間もある。しかし、どんな状況でもブライアンは歩みを止めない人だ。彼がどれほど強い人間なのか? それを描くためには、彼の弱い部分も見せなければならなかった。





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