2021.05.29
『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』あらすじ
2018年8月16日、惜しくもこの世をさってしまった「ソウルの女王」アレサ・フランクリン(1942-2018)。1972年1月13日、14日、ロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会で行われたライブを収録したライブ・アルバム「AMAZING GRACE」は、300万枚以上の販売を記録し大ヒット。史上最高のゴスペル・アルバムとして今も尚輝き続けている。その感動的な夜が遂に映像で蘇る。
Index
- 圧倒的な歌唱力を持つ天才
- 引き裂かれていたブラックミュージック
- 若き日の名匠のミスが、本作をお蔵入りに!?
- コンサートにあらず――“ここは教会で、これは礼拝”
- 神がかったボーカルとともに刻まれた時代の記録
圧倒的な歌唱力を持つ天才
ブラックミュージックの歴史は、多くの天才の存在に彩られているが、アレサ・フランクリンほどファンに愛され、なおかつ同業のミュージシャンの尊敬を勝ち得た女性シンガーはいないだろう。1961年に19歳で歌手としてデビューし、圧倒的な歌声によって時代を席巻。“チェイン・オブ・フールズ”“小さな願い”など、多くのヒット曲を世に放ったのはご存知の通り。2018年に76歳で世を去ったが、圧倒的な歌唱力を誇る彼女のボーカルは、今も音楽ファンに熱烈に愛されている。
そんな彼女の伝説的なパフォーマンスを収めたのが、映画『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』(18)。これは、アレサの名盤のひとつとして知られる1972年のライブアルバム『至上の愛〜チャーチ・コンサート〜』の録音時に撮影されたものだ。いわゆるコンサート・フィルムではあるが、ここにはその枠に収まらない要素が詰まっており、音楽ファンのみならず映画ファンも見逃せない作品となっている。本稿では、この映画の魅力を、舞台裏とともに検証する。
『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』予告
まず、基本的な知識としてアルバム『至上の愛〜チャーチ・コンサート〜』について解説しておきたい。これは1972年1月13、14日に米ロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会で行なわれた公演の模様を収めたもの。“公演”と呼ぶのは正しくないが、それについては後述する。アメリカではアレサ最大のヒット・アルバムとなり、グラミー賞の栄冠をも射止めている。このアルバムは2日間の演奏から選曲されていたが、1999年には2日間の公演を収めたコンプリート・バージョンのアルバムも発売された。
ちなみに、『至上の愛~』にはアレサがそれまでにヒットチャートに送り込んだ人気曲はまったく収録されていない。そもそも演奏さえされていないのだ。それはなぜか?