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『ヘルドッグス』原田眞人監督 念願の潜入捜査バイオレンス映画はいかにして生まれたか?【Director’s Interview Vol.237】

©2022「ヘルドッグス」製作委員会

『ヘルドッグス』原田眞人監督 念願の潜入捜査バイオレンス映画はいかにして生まれたか?【Director’s Interview Vol.237】

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全く違う映画が編集できるほどの素材量



Q:カット割りのテンポが速く、ワンシーンの中にも様々なアングルのカットが使われています。かなりのカット数を撮られたのではないでしょうか。


原田:いろんなアングルから撮っていますね。撮影前に絵コンテを描きましたが、絵コンテで表現してない前後も通して演じてもらい、その中から良い所を抽出して組み合わせたりしています。様々なアングルから撮ることによって、絵コンテを具現化するためのプロセスで起きるハプニングもすくいとっています。そういうものを編集で楽しんで入れていくんです。


普通、同じ芝居のテイクを狙いもはっきりしないで重ねていくと役者も疲れるだけですが、今回多分それは無かったと思います。「同じことをやってくれ」、と要求せず「テイクごとに多少動きが違っても、いろいろなアングルからカバーするから大丈夫だよ」と伝えて、やってもらうわけです。そうすると、役者の方も2テイク目以降は実験をしてみようとする。結果編集でつながらないところもあるけれども、それはカバレッジを増やすことによって、確実に編集で逃げられます。


だから役者の素養のある人なら絶対大丈夫なんです。演技的なバックグラウンドがはっきりしていて、自分の世界を持っている人はね。一方で、ただ部分的な芝居しかしてこなかった人にはかなり厳しい現場です。



『ヘルドッグス』©2022「ヘルドッグス」製作委員会


Q:脚本も原田監督が書かれていますが、編集をしながら構成が変わっていくということもあるのでしょうか?


原田:ありますよ。ストーリーの中で機能しなければ、そのシーン自体を落としたりします。息子(原田遊人)が編集マンなので、僕が気づかないところで、「こんなアングルでこんな芝居をしているけど、これは使わないの?」みたいなことを提案されることがある。だからそういうカットを入れたりします。すると構成が変わってくるから、「じゃあ全体的にもう1回練り直そうか」となる。


本当にいろいろなパターンの編集ができる素材があるんです。だから自分たちの中では、「これがベストだ」と思っているけれども、ひょっとしたら何年か経って、また同じ素材で編集したら全然別の映画を作ることも可能なんです。


Q:今後も原田監督のバイオレンス・アクション映画を期待したいのですが、そのような作品を撮る予定はありますか?


原田:実は次回作もノワールっぽい作品ですね。『ヘルドッグス』のように大勢人は死なないですが、一つ一つの死がハートに突き刺さるような映画です。これからもいろいろな映画を撮っていくと思いますが、人と人との殺し合いの中で、生き残るに値する人間を描くということを突き詰めていけば、戦争映画に行きつきます。だから広島に原爆が投下されて、どうやって生き抜いたかといった映画も撮りたいです。サイパンの玉砕を強いられた人の中で、バンザイクリフから飛び降りても生き残った人がいて、その話もやりたいと思っています。


人間の愚行を教訓としたバイオレントな映画だけど、その中で生き延びていくことがいかに崇高であるか、そういうものを描きたいですね。




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監督・脚本:原田眞人

1949年7月3日生まれ。静岡県出身。黒澤明、ハワード・ホークスといった巨匠を師と仰ぐ。79年に『さらば映画の友よインディアンサマー』で監督デビュー。『KAMIKAZE TAXI』(95)は、フランス・ヴァレンシエンヌ冒険映画祭で准グランプリ及び監督賞を受賞。『金融腐蝕列島〔呪縛〕』(99)、『クライマーズ・ハイ』(08)、『わが母の記』(12)、『駆込み女と駆出し男』『日本のいちばん長い日』(15)など数多くの作品を手掛けている。17年公開の『関ヶ原』では第41回日本アカデミー賞優秀監督賞、優秀作品賞などを受賞。18年公開の『検察側の罪人』、21年公開の『燃えよ剣』の公開が記憶に新しい。『ラストサムライ』(03/エドワード・ズウィック監督)では、俳優としてハリウッドデビューを果たしている。



取材・文:稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)





『ヘルドッグス』

9月16日(金)全国公開 

配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

©2022「ヘルドッグス」製作委員会

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