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『ヘルドッグス』原田眞人監督 念願の潜入捜査バイオレンス映画はいかにして生まれたか?【Director’s Interview Vol.237】
岡田准一による「技闘デザイン」
Q:岡田さんが技闘デザイン(アクション監督振り付け)として、全てのアクションシーンをデザインされたそうですが、監督は岡田さんとどんな風にアクションを組み立てていったのでしょうか?
原田:脚本には、ある程度イメージしてアクションを書いているので、それをベースにしていますが、キャラクター同士が単純にぶつかり合うアクションにはしたくなかったんです。キャラクターを色濃く骨太にして、「このキャラクターなら相手を攻撃する時、どんな手を使うだろう?」ということを考えてもらいました。兼高(岡田准一)だったらこんな攻撃、室岡(坂口健太郎)だったらこんな技、といった風に、キャラクターに沿ったアクションを岡田さんがデザインしてくれました。
Q:具体的にはどのようにアクションを決めていったのですか?
原田:まず岡田さんと小池達朗さんというスタントコーディネーター、さらにスタントチームがアクションを考える。それがある程度まとまると、僕を呼んで実際に見せてくれるわけです。それに対して「そこは長すぎるから、もうちょっと短くしよう」とか、いろいろアイデアを出す。それを彼らが受けてまとめていきました。特に岡田准一さんの、身体能力の高さと技闘デザイナーとしての柔軟性がすごく良かったですね。
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Q:ガンアクションの仕上がりも素晴らしいと思います。原田監督の作品では至近距離での撃ち合いが多く、あの距離感が絶妙な緊張感を作っていると思うのですが、そのあたりは意識されていますか?
原田:そうですね。拳銃は2メートル以上離れていたら、なかなか当たらないというのは聞いたことがあるんです。それで近くで撃つことにこだわっている面はあります。あと今回は、ボディガードのオーディションシーンにこだわりました。兼高と十朱には独自の仁義のような感覚がある。そういった感覚はジャン=ピエール・メルヴィルのフィルム・ノワールに影響を受けています。メルヴィルの作品の中でも、一番好きなのは『影の軍隊』(69)なんですが、あの延長線上にある感覚ですね。