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『ヘルドッグス』原田眞人監督 念願の潜入捜査バイオレンス映画はいかにして生まれたか?【Director’s Interview Vol.237】

©2022「ヘルドッグス」製作委員会

『ヘルドッグス』原田眞人監督 念願の潜入捜査バイオレンス映画はいかにして生まれたか?【Director’s Interview Vol.237】

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コロナによる撮影延期がプラスに作用



原田:コロナ禍で撮影開始が1年延びたことも、アクションにとっては良い方向に働きました。例えば殺し屋ルカ役の中島亜梨沙さんは元タカラジェンヌなんです。身体能力は高いけど、本来は線が細いし、あんなに激しいアクションは到底無理なのですが、1年かけて岡田さんに鍛えてもらい、あそこまで動けるようになりました。


Q:皮肉なことにコロナ禍によってアクションが充実したんですね。


原田:ただ残念ながら海外ロケができなくなりました。もともとは兼高があえて犯罪を犯してフィリピンの刑務所に入り、収監されている標的を殺すところから映画が始まるはずだったんです。そのシーンをフィリピンで撮る予定でロケ地も決まり、あとは僕が行くばかりの時にコロナ禍になって、断念せざるを得なかったのは痛手でした。ただ、こういう状況の中で制作部もロケハンで素晴らしい場所を見つけてくれました。例えば喜納というヤクザを殺すシーンに使った廃墟は、堂ヶ島の廃園になった蘭園なんです。僕としては満足のいくロケーションになりました。


Q:本作のロケーションは印象的な場所が多く、作品の独特の世界観ともマッチしていますね。


原田:僕は「ロケーションキャスティング」と呼んでいますが、配役にこだわるのと同じぐらい、ロケーションにもこだわるんです。今回はフィルム・ノワールの世界なので、やはり環境と人が重要になってくる。そこにプラス音楽ですよね。音楽に関してはかなり早い段階で土屋玲子さん(『検察側の罪人』(18)、『燃えよ剣』でも音楽を担当)と話しあっていました。ニック・ジョナスの「Chains」のような曲想で作って欲しいと。そこがうまくかみ合って転がっていきました。それはやっぱり1年の準備期間があったということも大きいです。



『ヘルドッグス』©2022「ヘルドッグス」製作委員会


現代アートを意識的に取り込んだ狙い



Q:作中にフレイザーの「金枝篇」の引用など『地獄の黙示録』を彷彿とさせる要素がちりばめてあったり、現代美術を小道具として配置するといった演出も興味深かったです。


原田:原作にもある『地獄の黙示録』が持つ要素のどれを映画に取り入れるべきかと考えた時、やはりカーツが何を目指していたのか、何を読んでいたのか、ということだろうと。『地獄の黙示録』でカーツが愛読していた書物が「金枝篇」。それで「金枝篇」を開けばターナーの絵が出てくる。これを十朱の世界観にしようという風に美術にオーダーして、絵を描いてもらったりしました。


あとは、兼高や室岡の部屋にも、有名無名問わず様々なアーティストたちの作品を配置しました。兼高の部屋には、裕人礫翔(ひろとらくしょう)さんという『燃えよ剣』でも作品を出していただいたアーティストの作品を入れました。室岡の方は、これから伸びてくる若いアーティストと、ベテランの作品を取り混ぜてバランスをとりました。アート映画ではないけれども、目の肥えた人が観たときに楽しんでもらえるような要素があればいいなと、いつも考えています。ことに今回のような殺伐とした世界の話では、美術の美しさは強調したかったですね。




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