『舞妓Haaaan!!!』(07)、『謝罪の王様』(13)などでおなじみの、阿部サダヲと水田伸生監督のタッグが送る最新作『アイ・アム まきもと』。実はこの作品には原作があり、それがイギリス・イタリア映画の『おみおくりの作法(原題:STILL LIFE)』(15)。一見このコンビが作る映画とは思えないトーンの原作に思えるが、本作は見事な換骨奪胎で二人の色にバッチリ染め上がっている。それを実現させたのが、主演の阿部サダヲと満島ひかりをはじめとする共演陣の演技力だろう。コメディだからこそ要求される演技力とバランスを、見事にそしてナチュラルに表現した阿部サダヲと満島ひかり。撮影現場での様子はどうだったのか?二人に話を伺った。
『アイ・アム まきもと』あらすじ
小さな市役所に勤める牧本(阿部サダヲ)の仕事は、人知れず亡くなった人を埋葬する「おみおくり係」。故人の思いを大事にするあまり、つい警察のルールより自身のルールを優先して刑事・神代(松下洸平)に日々怒られている。ある日牧本は、身寄りなく亡くなった老人・蕪木(宇崎竜童)の部屋を訪れ、彼の娘と思しき少女の写真を発見する。一方、県庁からきた新任局長・小野口(坪倉由幸)が「おみおくり係」廃止を決定する。蕪木の一件が“最後の仕事”となった牧本は、写真の少女探しと、一人でも多くの参列者を葬儀に呼ぶため、わずかな手がかりを頼りに蕪木のかつての友人や知人を探し出し訪ねていく。工場で蕪木と同僚だった平光(松尾スズキ)、漁港で居酒屋を営む元恋人・みはる(宮沢りえ)、炭鉱で蕪木に命を救われたという槍田(國村隼)、一時期ともに生活したホームレス仲間、そして写真の少女で蕪木の娘・塔子(満島ひかり)。蕪木の人生を辿るうちに、牧本にも少しずつ変化が生じていく。そして、牧本の“最後のおみおくり”には、思いもしなかった奇跡が待っていた。
Index
サインに書いた「STILL LIFE」
Q:『アイ・アム まきもと』の原作は『おみおくりの作法(原題:STILL LIFE)』ですが、原作のエッセンスを受け継ぎつつ、全く新しい映画が生まれていました。完成した作品をみていかがでしたか?
阿部:面白かったです。はい。
満島:阿部さん、観ました(笑)?
阿部:観ましたよ(笑)!本当に面白かったですね。
Q:阿部さんは原作の『おみおくりの作法』はご覧になったんですか?
阿部:撮影中もよく観ていました。明日はこういうシーンの撮影だなと思ったら、その部分を見返したりしていました。キャストも監督も違うので真似するわけではありませんが、参考にはしようと。この映画、原作に忠実なシーンは結構あるんですよ。
『アイ・アム まきもと』©2022 映画『アイ・アム まきもと』製作委員会
満島:私は撮影が終わってから原作が『おみおくりの作法』だと知ったんです。元々すごく好きな映画で。亡くなった方の写真をアルバムに貼るシーンとか、まきもとさんが一人でお家にいるときの画角とか、完成した『アイ・アム まきもと』を観ながら「あ、これ観たことある!」って思いました。阿部さんが演じることでツッコミどころが何倍にも増えている感じがしてすごく面白かったです。
阿部:撮影の時にロケ地のみなさんにお礼も込めてサインをさせてもらったりするのですが、そのとき決まっていたタイトルの「STILL LIFE」という文字もずっと書いていたんです。監督が「STILL LIFE」って書くので、僕も同じように書いていたのですが、最終的にタイトルが『アイ・アム まきもと』になったって聞いてびっくりしました(笑)。
Q:サインをもらった方は、「STILL LIFE」は阿部さんの好きな言葉なのかな?と思ったかもしれませんね。
阿部:そうなんです、「STILL LIFE 阿部サダヲ」みたいになってました(笑)。今考えるとちょっとゾッとしますね。だって『アイ・アム まきもと』って1枚も書いてないですから。「この言葉なんだろう」って思う方はいるんじゃないですか?
満島:阿部さんの格言、生きる指針みたいに思われてるかも(笑)。
阿部:怖いですねぇ(笑)。