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『君だけが知らない』ソ・ユミン監督 難しかったのは緊張感の持続と物語牽引のバランス【Director’s Interview Vol.253】
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緊張感の持続と物語の牽引
Q:かなり綿密な脚本となっていますが、執筆はどのように進められたのでしょうか。
ソ:初稿の段階ではラフな感じで物語を組み立て、その後色々な箇所を修正していきました。初稿と完成した本編では違う映画だと思うくらい内容が変わっています。記憶を失った女性が登場し自分の過去をたどっていく大枠は同じですが、それ以外のディテールが全く違うんです。それも全ては、どんでん返しの面白さを追求するがゆえ。脚本を書きながらどんどん変わっていきましたね。
Q:時系列もかなり入り組んで複雑ですが、脚本執筆時の管理は大変だったのではないでしょうか。
ソ:過去と現在が交錯していくのでお話が複雑になりますよね。それでも観客の皆さんにはその複雑な部分も理解してもらう必要がある。それで実は、それぞれの時間軸は順番通りにしているんです。また過去や現在等それぞれのシーンを描くときには、集中して観てもらえるように時間配分にも気を遣って調整しました。
Q:謎が解明されていくタイミングや、観客へのヒント、衝撃度の具合などの調整も難しかったかと思いますが、そこはどのように客観性をもって制作されましたか。
ソ:まさにそこは一番難しいところでした。観客は徐々に真実を知り状況を把握していきますが、同時に緊張感も持続させたかった。真実をどのタイミングでどれくらい伝えると、緊張感とのバランスも保たれつつ且つ物語も動いていくのか、そこは悩みました。悩んだときはとにかく周りの人たちに読んでもらい、彼らの意見を聞いて判断しました。観客が気になるミステリーな点を残しつつも理解してもらうことに重点を置き、物語を構築していきました。
『君だけが知らない』©2021 CJ ENM. All Rights Reserved.
Q:写真やペンダント、カバン、名刺など、小道具が非常に効果的に使われています。言葉で説明するのではなく、そういったものに物語を担わせるのは素晴らしかったですが、その辺りは意識されたのでしょうか。
ソ:この作品においては小道具が大切な要素になっています。小道具も物語の一部だと思い、かなり気を使って登場させました。小道具を使うことによって、あえて観客を混乱させたり、情報を与えるツールにしたりと色々な仕掛けを施しています。ある小道具はその存在自体が非常にアイロニカルな象徴になったりもしています。ネタバレになるのであまり多くは言えませんが、小道具の部分もぜひ楽しんで欲しいですね。
Q:先ほどヒッチコックの名前も出ましたが、ソ監督が影響を受けた好きな映画作品を教えてください。ヒッチコックやサスペンス・スリラー以外でも大丈夫です。
ソ:もちろんヒッチコックやサスペンス・スリラーは好きなのですが、映画のジャンル全てでいうと、マーティン・スコセッシ監督の『レイジング・ブル』(80)とウディ・アレン監督の『アニー・ホール』(77)が大好きです。この2作は今でもよく観ていますし、私に映画を撮りたいと思わせてくれた作品です。
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監督・脚本:ソ・ユミン
長年、『八月のクリスマス』『四月の雪』で知られる名匠ホ・ジノ監督の元、助監督や脚本を手掛けたのち、本作で長編デビューを飾る。次回作は、2008年に日本でも公開された台湾の人気スタージェイ・チョウ監督・主演の台湾映画『言えない秘密』のリメイク。主演は、「EXO」メンバーで俳優としても活動しているD.O.(ド・ギョンス)。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『君だけが知らない』
10月28日(金)シネマート新宿、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺、kino cinēma立川高島屋S.C.館、ほか全国ロードショー
配給:シンカ
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