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『君だけが知らない』ソ・ユミン監督 難しかったのは緊張感の持続と物語牽引のバランス【Director’s Interview Vol.253】
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『君だけが知らない』を観て思い浮かんだのはヒッチコックだった。それくらい上質なサスペンス映画を観た読後感を与えてくれる作品だ。ありとあらゆる仕掛けや“オチ”が出尽くしたジャンルに果敢に挑み、新しい物語と王道のサスペンスを見事に両立させたソ・ユミン監督。これが監督デビュー作という彼女はこの映画に何を込めたのか?話を伺った。
『君だけが知らない』あらすじ
事故に遭い、記憶を失ってしまったスジン(ソ・イェジ)。夫・ジフン(キム・ガンウ)の献身的なサポートで、日常生活を取り戻し始めるも、幻覚で未来が見えるようになっていく。そんなある日、スジンは殺人現場を目撃してしまい、実際に死体が発見された。次第に彼女の精神は混乱していき、夫さえも怪しむようになっていく…。
Index
感情表現で差別化する
Q:長編デビュー作にあたり、サスペンス・スリラーというジャンルを選んだ理由を教えてください。
ソ:大学で映画を勉強していたときからサスペンス・スリラーが大好きでよく観ていました。そのジャンルのシナリオもずっと書いていましたが、なかなか映画化には至らなかった。その後ずいぶんと時間はかかりましたが、この『君だけが知らない』のシナリオは周りの評判がとても良く、何とかデビュー作として撮ることが出来ました。
Q:映画化まで時間がかかった理由の一つに、サスペンス・スリラーというジャンルであることは関係していますか?
ソ:おっしゃる通り関係していると思います。サスペンスやスリラーはどうしてもマイナーなジャンルだと思われがち。先入観もあったと思いますね。
『君だけが知らない』©2021 CJ ENM. All Rights Reserved.
Q:サスペンスは世界中の映画でありとあらゆる手法が使われていて、新しいチャレンジはかなりハードルが高そうですが、プレッシャーはありませんでしたか。
ソ:プレッシャーは大きかったです。これまでにすでに様々なサスペンス映画が作られていますし、サスペンスといえばどんでん返しを期待されるところもある。そこに映画的な面白さも加えなければならない。そういったことを踏まえて、どうしたら新しい作品が作れるか悩みました。特に今回は、ストーリー自体が持っている感動も伝えたいと思っていたので、サスペンスというジャンルをベースにしながらも、キャラクターの感情表現を大事にしつつ、心に響くものになることを心がけました。そこは他のサスペンス映画と差別化しようとしたところです。
Q:本作からはヒッチコックの影響を強く感じました。新しい試みをしつつ、サスペンスの基本をしっかり抑えている印象がありました。
ソ:細かいところまで観てくださっていますね(笑)。ありがとうございます。私はヒッチコックが大好きで、大学でも『めまい』(58)をはじめ彼の作品について勉強してきました。かなり影響を受けています。ヒッチコックの影響を受けた次世代のサスペンス・スリラー作品も好きで、そこの影響も強いと思います。
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