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『グリーン・ナイト』デヴィッド・ロウリー監督 最後には必ず自然が勝つ 【Director’s Interview Vol.264】

© 2021 Green Knight Productions LLC. All Rights Reserved

『グリーン・ナイト』デヴィッド・ロウリー監督 最後には必ず自然が勝つ 【Director’s Interview Vol.264】

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A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』(17)、『さらば愛しきアウトロー』(18)など、これまでジャンルやテーマを横断しつつ作品を生み出してきたデヴィッド・ロウリー監督。最新作『グリーン・ナイト』は、中世文学の最高傑作とも言われる作者不明の叙事詩「サー・ガウェインと緑の騎士」を脚色した本格ファンタジーだ。青年の成長譚や母親との関係、自然と人間などをテーマに据え、神の如く客観的で冷徹な視点を用い冒険ファンタジーを描き出す。ファンタジーという世界観でこれほどまでにアート性を高めて描き出せたのは、製作・配給を手掛けたA24の存在も大きいだろう。


本作制作にあたり、自身の好きな多くの映画を参考にしたというロウリー監督。どのような思いでファンタジー映画を手掛けたのか。話を伺った。



『グリーン・ナイト』あらすじ

アーサー王の甥であるサー・ガウェイン(デヴ・パテル)は、まだ正式な騎士ではなかった。彼には人々に語られる英雄譚もなく、ただ空虚で怠惰な日々を送っていた。クリスマスの日。アーサー王の宮殿では、円卓の騎士たちが集う宴が開かれていた。その最中、まるで全身が草木に包まれたような異様な風貌の緑の騎士が現れ、“クリスマスの遊び事”と称した、恐ろしい首切りゲームを提案する。その挑発に乗ったガウェインは、彼の首を一振りで斬り落とす。しかし、緑の騎士は転がる首を堂々と自身で拾い上げると、「1年後のクリスマスに私を捜し出し、ひざまずいて、私からの一撃を受けるのだ」と言い残し、馬で走り去るのだった。それは、ガウェインにとって、呪いと厳しい試練の始まりだった。1年後、ガウェインは約束を果たすべく、未知なる世界へと旅立ってゆく。気が触れた盗賊、彷徨う巨人、言葉を話すキツネ・・・生きている者、死んでいる者、そして人間ですらない者たちが次々に現れ、彼を緑の騎士のもとへと導いてゆく。


Index


最後には必ず自然が勝つ



Q:母親を魔女にするという原作からの翻案が功を奏しているように感じました。このアイデアはどこから出てきたのでしょうか。


ロウリー:もともとガウェインの母親と魔女のモーガン・ル・フェイは別々のキャラクターとして登場させるつもりでした。それを、シンプルに効率の良さを求めてまとめることにしました。そのおかげで、追加キャラクターを登場させることなく、物語をスムーズに進められるようになったのです。私の潜在意識の中にある何かが働いたのでしょう、このたったひとつの変更が映画の鍵を開け、私が予想していなかった物語の側面に光を当てました。また、この変更によって、映画が私にとってより私的なものになったと思います。



『グリーン・ナイト』© 2021 Green Knight Productions LLC. All Rights Reserved


Q:対峙しなければならない相手が「グリーン・ナイト=自然」になってしまうという構図は現代の我々と重なる部分も感じました。現代を生きる我々はこれまで自然を破壊してきたが故に、ある意味自然と対峙しなければならない状態に陥っています。中世を舞台にしたファンタジーに現代性を感じさせることの意義について、考えがあれば教えてください。


ロウリー:よくぞ気づいてくださいました。この映画の明確なテーマというわけではありませんが、私にとってはすごく大切なことです。アリシア・ヴィキャンデル演じる奥方が緑色について語る場面は、私たちと自然との関係や、たとえ私たちが自然を破壊したとしても、最後には必ず自然が勝つということを表現しています。気候変動についてのニュースを見てパニックを起こしそうになったときも、このことが私に少しの安心感を与えてくれるんです。




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